日銀が1月29日の金融政策決定会合で決断したマイナス金利政策が早くも裏目に出てしまった。9日の市場は為替相場が1ドル=114円台を付けるなど円が急騰、日経平均株価は5%安に相当する918円の大幅下げとなった。この日のマーケットは欧州の株安が震源で、株式は寄付きから売り込まれ、売りが売りを呼ぶセリングクライマックス状態が一日中続いた。長期金利もこの日10年もの国債の利回りが初めてマイナスを付けるなど、市場関係者によると、株式、為替、債券市場すべてで経験したことのない相場環境で右往左往するばかりだったという。
市場に跳ね返されたマイナス金利
9日は最近影響を受けてきた中国の上海市場が春節で休場のため、中国市場の動きとは関係なく東京の株式は棒下げとなった。特に金融・証券株は下げがきつかった。三菱UFJファイナンシャル・グループは8.7%、三井住友ファイナンシャルグループは8.9%、野村ホールディングスは9.0%それぞれ下げた。マイナス金利の導入により、銀行の収益が悪化するのではないかという見方が強まった結果で、マイナス金利導入は金融株にとっては悪材料になっている。
日銀は銀行が日銀に預ける当座預金から手数料を取ることで、設備投資などに企業向け融資を増やしたい考えだが、これほどマーケットが混乱して株安の状況が続けば、主要企業は設備投資には消極的にならざるを得なくなり、銀行からの融資は増えるどころか減る可能性が大きくなる。
マイナス金利については、専門家の間でも導入時から賛否両論が指摘されていたが、当面の防衛ラインとみられていた1ドル=115円を突破した円高になったことで、日銀の思惑が外れた形だ。黒田東彦日銀総裁はマイナス金利導入後の講演で「必要な場合、さらに金利引き下げを行う」と述べ、マイナス金利の幅の拡大も辞さない考えを示していた。
これまでの量的緩和に加えて、マイナス金利という質的緩和を投入すれば、円高ドル安の流れを食い止められるというのが日銀の見方だった。マイナス金利という「黒田バズーカ」を市場に撃ち込んだが、市場の流れに1週間で跳ね返されてしまった。世界のマネーの流れは、マイナス金利を導入した欧州中央銀行(ECB)や日銀を無視したかのように円が買われている。