今月の旅指南

2009年12月11日

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エドガー・ドガ
《入浴後の朝食》 1894年頃
パステル・紙 トリトン財団
Triton Foundation,
The Netherlands

――ロートレックは画塾で学ぶためにモンマルトルへ行き、様々な画家たちと出会いますが、特に影響を受けた人は誰でしょう?

木島氏:ロートレックは常に”人”を描く対象としてきたので、ドガの作品からは影響は受けています。当時、印象派の画家の多くが、風景を描いていました。人物を描いた画家の中で、人間の本質を描こうとしたのはドガでした。
   
――ロートレックは人間の本質を描こうとするあまり、花形スターのイヴェット・ギルベールを描いた際には、嫌がられてしまったこともあったそうですね。

木島氏:ルノワールは、女性を常に美しく描きましたが、どの女性も似通った顔をしています。ロートレックは、人間の性格や人柄、印象を絵で表現しようとしました。モデルに怒られもしましたが、ロートレックは持ち前の人懐こい性格で、最終的には仲直りしていたようです。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 《ムーラン・ルージュのラ・グリュ》 1891年 リトグラフ 三浦コレクション 川崎市市民ミュージアム

――当時フランスでは、印象派の画家たちが浮世絵の影響を受けていたそうですが、ロートレックもそうだったのでしょうか?

木島氏:はい。19世紀末に日本の浮世絵がフランスに紹介された時、画家たちは衝撃を受けました。ヨーロッパの絵画は、ルネッサンスからの流れで人体の立体感を出すことが重要視されていました。「影から描いている」と言われたくらいです。一方で、浮世絵は平塗りで立体感が無いにもかかわらず、強いインパクトがありました。

特に、ポスターを制作していたロートレックにとって、作品を目立たせる効果のある浮世絵の技法「平塗り」は、点線で描く印象派特有のタッチよりも、魅力的なものでした。代表作の一つである「ムーラン・ルージュのラ・グリュ」では浮世絵に着想を得た大胆な構図を取り入れています。歌川広重の富士三十六景のように絵画を3つの空間に分け、手前の紳士とランプの光は大きく、奥の観客たちは小さく描き、中心となる女性ダンサーを目立たせました。これまでにない画法で、ロートレックのポスターは大きな支持を得ました。

展覧会会場でアリスティド・ブリュリアンのポスターと木島氏

――最後に、今回のBunkamuraの展覧会「ロートレック・コネクション」では、皆さんにどんなところを観てほしいでしょうか?

 木島氏:ロートレックの生きた19世紀末のフランスは、人と人との付き合いが密で、とても人間くさい時代です。ロートレックを取り囲む人々、時代の雰囲気を作品から感じてもらえればと思います。

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