オリンパスなど「飛ばし」で悪用
2006年にはホリエモンで話題になったライブドア事件が起きた。有価証券報告書虚偽記載等の疑いによる証券取引法違反に問われたが、ここでもSPCが使われていた。
記憶に新しいところでは、11年に巨額の損失隠しが発覚したオリンパスの事件がある。このケースは経営トップが共謀してケイマン諸島に設立したSPCを使って資産運用や投資による失敗の損失を海外に設立したSPCに移し替える「飛ばし」やM&Aの不透明な取引を繰り返していた。前社長などが金融商品取引法違反などで逮捕され、大手証券会社の元役員が不正の指南役をしていたことも問題になった。
12年にはAIJ投資顧問が厚生年金の預かり資産2100億円を消失した事件が起きた。オフショアで問題になったのは英領バージン諸島に設立したSPCを使って私募債を発行したことだったという。このケースでは証券取引等監視委員会はAIJを金融商品取引法違反で告発、AIJの社長の実刑が確定している。
難しい実態解明
「今回のパナマ文書を見ると、設立された会社は90年代の古いものが多い。金融取引でSPCを使うのはいまでは当たり前で、IMFもオフショア金融センターの規制が緩いのは問題があるとして2000年ごろから審査を開始し、私もそれに参加した」という。
オフショアには多くのSPCが設立されているが、事務所があるわけでもなく社員もいない。あるのは会社の登記簿だけだという。このためSPCは住所代わりに私書箱が使われているという。「ぺーパーカンパニーなので登記簿を見て代表者や役員が誰なのかを調べる。だが、多くの場合、名前が出ているのは名義を貸しただけのことが大半で、真の所有者が誰なのか、背後に誰がいるのかを突き止めるのが難しい。こうした流れを海外の当局と連携しながら丹念に調べて不正な資金の流れを解明するのが、証券取引等監視委委員会としての仕事になる」と実態解明の難しさを指摘する。
英領バージン諸島に設立されたSPCが悪用されるケースが多く、こうした事例はあまり減っていない。SPCを使った巨額な不正取引事件としては、01年に発覚して経営破たんしたエンロン事件がある。カリブ海のSPCを多数利用して、簿外取引による決算の水増しを行っていた。数年前には破たんしたイタリアの食品会社パルマラットも同様だったという。「先進国を含めてオフショアに対する規制を強化してきているので、穴は埋まってはきている。だが、オリンパスやライブドア、AIJなどのように海外に設立したSPCを悪用したケースもある」と述べ、今後も監視を強化する姿勢を示した。
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