2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年6月1日

 また、同日にベトナムの地元メディアが伝えたのは、ベトナム領海を侵犯した疑いで前月3月31日、ベトナム国境警備当局が中国船を拿捕したということだった。

 3日には、米国の原子力空母ジョン・C・ステニスが南シナ海に展開し、中国に対する警戒監視活動を行っていることが複数の日本政府高官によって明らかにされた。

 8日には、カーター米国防長官がステルス性能を持つ最新駆逐艦全3隻を、太平洋とインド洋を管轄する太平洋艦隊に配属する方針を表明した。これが今後、どの国の海軍への抑止力となるのかは明白であろう。

 そして12日には、日本海上自衛隊の護衛艦「ありあけ」と「せとぎり」が、南シナ海に面するベトナムの軍事要衝カムラン湾の国際港に初めて寄港した。翌13日、今度はカーター米国防長官がフィリピンを訪問して、米フィリピン両軍による定例軍事演習「バリカタン」を視察した。

 このように、今春からの短い期間で、日米と南シナ海周辺諸国は、「南シナ海問題」への対処として緊密な外交的・軍事的な動きを展開してきた。その矛先が中国であることに疑念はないだろう。関係諸国は今、米国と米軍の動きを中心に、政治的・軍事的「中国包囲網」を着々と構築している最中なのだ。

ベトナムへの武器輸出解禁の意味

 こうした「中国包囲網」の仕上げとなったのが、冒頭で取り上げた伊勢志摩サミットであるが、その前哨戦として注目されたのは、4月10日、11日に広島で開かれたG7外相会合である。

 この外相会合でも、やはり南シナ海問題を中心的な議題として取り上げた。さまざまな議論を展開した結果、外相会合は、中国の進める南シナ海の軍事拠点化を念頭に「現状を変更し緊張を高め得るあらゆる威嚇的、威圧的または挑発的な一方的行動に対し、強い反対を表明する」と声明を発表した。

 名指しこそ避けているが、中国の取った行動を「威嚇的・威圧的・挑発的な一方的行動」と厳しく批判した上で、7カ国の総意として「強い反対」を明確に表明した。それは、中国の暴走に対する世界主要国の危機感の表れであると同時に、中国に対する国際社会の圧力にもなったはずだ。

 特に中国からすれば、G7の中には、中国と関係の深いイギリスやフランスなども含まれているため、こうした国々に限って日米と同調して「反中」に転じることはないとひそかに期待していたはずだが、それが見事に裏切られたで形であろう。

 G7が一致団結して中国の行動を厳しく批判したこの状況に対して、中国政府が孤立感を感じたのと同時に、焦燥感をも抱くことになった。


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