2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2016年6月3日

首都圏のスーパーに並ぶ伊藤園の「水素水H2」は、伊勢志摩サミットでも海外報道陣にふるまわれた

 しかも、パウチ入りは1本200ミリリットルで278円(税別)と普通のミネラルウォーターと比べれば高額だ。パウチのパッケージが高いためと説明するが、新しいアルミ缶商品も185円(同)と普通のアルミ缶入り清涼飲料水より高く、トクホ(消費者庁が許可する特定保健用食品)飲料並みである。再度理由を問うと、「お客様に価値を見出してもらいたいから」。

 茶カテキンなどの研究所をもつ伊藤園自らが、水素についての研究を行い、トクホを取るなどの予定はなく、太田氏ら外部の研究者が論文を出してくれるのを期待しているという。

 08年の輸入水ブーム、11年の東日本大震災などをきっかけに着実に拡大を続けている水市場。水飲料ブランドの1位、全飲料の3位ブランドでもある「サントリー天然水」を例に取っても、03年に年間2130万ケースだった出荷量は14年には8300万ケースと約4倍に激増している。

 一方、05年をピークに横ばいの緑茶飲料を主力製品とする伊藤園は、06年には「磨かれて、澄みきった日本の水」の販売開始、08年にはカルピスから仏ダノングループ「エビアン」の独占販売権を買収と、かねてから水飲料にも力を入れているが、水飲料すべて合わせても、飲料ブランド総合第2位、年間8500万ケースを売り上げる「お~いお茶」の足元にも及ばない。

 水素水市場は前年比3割増、市場規模は150億円とも200億円とも言われ、水素水生成器大手、日本トリムの株価上昇、中京医薬品の水素水売り上げ好調を理由とした経常利益上方修正のニュースも出る中、効果は謳わず、研究はせずとも、「消費者の勝手な期待感」を付加価値として「コストはかけずに水を高く売る」というのが伊藤園の戦略のようだ。

悪びれないパナソニック

「ええ、できあがった水素水はアルカリイオン水と同じですよ」

 そう答えるのは、水道の蛇口に取り付ける水素水生成器を発売しているパナソニックのマーケティング担当者だ。パナソニックは1980年頃から「アルカリイオン整水器」を発売しているが、水を電解してアルカリ水を作る過程で、水素も発生することは以前から認識していた。

 水素水は身体に良いという話が広まると、13年10月「還元水素水生成器」の販売を開始。それまでは、アルカリイオン整水器のカタログに「水素も含む」という表記をするにとどめていたが、いよいよ"水素水"というラベルで売り出した。


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