当初は「パナソニックのお店」と呼ばれる系列店での取り扱いだったが、15年秋に家電量販店での販売を開始。同年12月に三宅裕司氏がMCを務めるTBSテレビ「健康カプセル! ゲンキの時間」で取り上げられると、パナソニックのウェブサイトにある水素水コーナーのページビューが700倍に。発売中の3機種が一時品切れに陥るほどで、現在も供給が追い付かなくなってきていると言う。
パナソニックによれば、水素水生成器とアルカリイオン整水器の基本構造、基本原理は「全く同じ」。違いを問うと、社内整理としては「電極が5枚以上あり、かつ"水素チャージボタン"がついているものを還元水素水生成器と呼んでいる」と言う。同社ウェブサイトによれば、水素チャージボタンとは、電解しづらい水質でも電解し、水素をたっぷり発生させる機能らしい。水素チャージボタンがないアルカリイオン整水器でも、もちろん水素は発生する。
構造・原理は同じでも、価格の方は全く異なる。アルカリイオン整水器は、普及帯は電極3枚で3万円代、電極7枚の最上位機種は水素チャージボタンがないだけで実売8万円を切るのに、水素水生成器は同じ電極7枚で、上位機種17万円、初代機種も12万円と極めて高額(いずれも価格比較サイト「価格ドットコム」の平均価格)。水素水生成器の売れ行き(台数ベース)は、15年度が13年度の約4倍と好調だ。
アルカリイオン整水器(法律上の名称は電解水生成器)の薬事法承認は1960年代と古く、「慢性下痢、消化不良、胃腸内異常発酵、制酸、胃酸過多に有効である」と謳うことができる。効果の機序ははっきりせず、現在では、効果そのものも危ぶまれているが、90年代には成人病、アトピー、がん等に効くといった表示まで氾濫し、厚生省(当時)が不適切広告を禁止する通知を出すに至っている。パナソニックは水素水生成器と並行して今もアルカリイオン整水器を販売している。
ところで、アルカリイオン整水器では、飲料水としての安全性を確保するために㏗(水素イオン指数)は10以下を保つ必要がある。しかし、パナソニックによれば、㏗を守ると水素濃度は0.6ppmから0.7ppm程度止まりになる。伊藤園の水素水はどうか。圧力をかけるなどして常温常圧時の飽和濃度1.6ppm以上の「高濃度」で水素を充填していると謳うが、開栓時に保証する濃度はボトルで0.3ppm、パウチでも0.4ppm。冒頭に挙げた太田氏の著書によれば、水素水の健康効果を得るためには最低0.8ppmの濃度が必要だというが、いずれもこれを下回る。
しかし、そもそも太田氏の言う0.8ppmという数字にも科学的根拠があるのか。著書によれば、0.8ppmは「尿が出やすくなる濃度」。0.2ppmでもトイレに行きたくなる人はいるだろうから水素水に効果はあり、濃ければ濃いほどよいだろうとしているだけである。要は、水素水の濃度を競うのも、濃度にケチをつけるのもあまり意味がないということになる。
15年現在、350の論文が発表されているという水素水。濃度はさておき、科学的にはどの程度の効果が確認されているものなのか。