2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2016年6月3日

 太田氏の著書によれば、水素ガス、水素水、水素風呂など様々な形で水素を体に取り入れることが病気の治療や予防に効果を持つことが分かっており、再現性実験や大規模治験などの検証を待つまでもない。太田氏が最も効果を実感するのは水素風呂だといい、太田氏の次男、太田史暁氏の経営する企業は水素入り化粧品「Auter(オーター)」を販売する。

 病気も老化もすべてはフリーラジカルで説明できるとの立場をとり、10年前の写真と比べると確かに若くなっているとする太田氏。取材を申し入れたところ、「取材に関しての申し合わせ」という文書にサインを求められた。記事全てを開示して事前承諾を取り、太田氏が承服できない場合は氏名を出してはならないという内容だった。サインはできないと伝えると「話を聞くだけであればよい」と言うので、筆者は太田氏の研究室を訪ねている。太田氏のキャラクターあふれるやり取りを記事にできないのが心残りだ。製造が簡単であり、ありふれた物質である水素の特許取得が難しい事情を鑑みると、同情の念が生じないわけではない。

中国へはばたく水素水ビジネス

 しかし、論文として発表されているデータは細胞実験や動物実験と、母数の少ない試験的な臨床試験のみ。治験が始まっているとも聞くが、実用レベルでの効果や安全性はまだ確認されていない。テレビやファッション誌で息子の販売する化粧品を推奨するなど"盛りすぎ感"が否めない科学者としての態度や、それに便乗する大手メーカーは、改めて品性が問われる。

 水素分子の研究開発を続けてきたというMiZ(ミズ)株式会社(神奈川県鎌倉市)は最近、新聞に全面広告を出し、水素の効果効能を調べた337の英語論文を一覧で紹介した。日本以外の論文で、欧米の大学・研究所によるものは34に過ぎない。一方中国は196を数え、近年存在感を増している。水素水ビジネスは、水への不安感が強く、日本とは許認可体制が異なる中国へと拠点を移し始めている。

  
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