BIG DEAL

2016年6月7日

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 ところで、5月30日の日経新聞に、米の大手投資ファンドが中国の不良債権処理ビジネスに参入するとの報道があった。そして個人的には、三菱の日産入りより大きなインパクトを持って記事を読んだ。思えば、日本でSpecial Situationという言葉が盛んに使われたのは、バブルの後始末が本格化した2000年から2007年頃だ。バブル崩壊によって銀行は大量の不良債権を積み上げてしまった。倒産したり国有化されたりする銀行が相次ぎ、日本の金融セクターがSpecial Situationに陥ってしまったわけだ。バランスシートの健全化を取り戻すために、各銀行は不良債権をバルクで放出した。買い手だったのは欧米の投資ファンドである。

 不良債権ビジネスの基本は値付けと回収だ。100億円の貸し出しが焦げ付いたとしよう。銀行は回収できない不良債権を、ファンドのような回収屋に5億円で売却してバランスシートから外す。回収屋は債務者に借金90%の棒引きをするから10億だけでも返せと提案する。10億なら……と債務者がほかの資産を売ってなんとかその金額を用立てれば、もともとの購入価格との差額5億円が自分の儲けになるという訳だ。

 バブルの最終章において日本の銀行は何兆円という不良債権の塊をファンドに売却した。そしてファンドはそれを回収しまくって巨額の利益を得たのである。銀行の弱みに付け込んで大儲けするその姿から、そのようなファンドがハゲタカと呼ばれたことは記憶に新しい。作家・真山仁さんはその名もズバリの「ハゲタカ」というタイトルの小説を書いているが、読まれた方もいらっしゃるのではないか。

政府自らが身を置いたことがサプライズ

 日経新聞の記事によると、大手のファンドは中国国営の資産管理会社と提携して不良債権の処理を進めるとしている。まずそれがサプライズであった。国営企業、つまり政府がよく自らの資産状況を外資に晒す決断をしたなと。先程、100億円の債権を5億円で売買する例を挙げたが、ファンドは何も藪から棒に低い値段をつけているわけではない。ファンドが買取り金額として提示する額は、銀行が融資したビジネスや企業体が生み出すキャッシュフローから計算されるローンの現在価値なのである。

 キャッシュフローが小さければ、その価値は当初のローン元本を大幅に下回る。極端な話、キャッシュフローがゼロであれば、ローンの価値もゼロになる。いずれにしてもローンの対象になっているビジネスが徹底的に分析されて丸裸にされれば、銀行や資産管理会社の資産の劣化状況もおのずと明らかになる。そのような状況に政府自らが身を置いたことがサプライズである。そこまでしなくてはいけない状況ということか。

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