2022年11月30日(水)

WEDGE REPORT

2016年8月8日

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崔 碩栄 (チェ・ソギョン)

ジャーナリスト

1972年韓国ソウル生まれ。韓国の大学で日本学を専攻し、1999年渡日。関東地方の国立大学で教育学修士号を取得。日本のミュージカル劇団、IT会社などで日韓の橋渡しをする業務に従事する。現在、フリーライターとして活動、日本に関する紹介記事を中心に雑誌などに寄稿。著書に『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』(彩図社刊)、『「反日モンスター」はこうして作られた-狂暴化する韓国人の心の中の怪物〈ケムル〉』(講談社刊)がある。

 だとすれば、韓国マスコミが「極右」という言葉を惜しげもなく使う理由は何なのか? 極右という言葉の辞書的な意味が日本と同様であることは先ほど述べた通りである。

 ただし、ただし、である。韓国においては、相手が「日本」の場合に限り、この言葉の意味が唐突に拡張されるのだ。韓国マスコミは韓国の価値観や主張と対立したり、あるいは、韓国を非難する日本側の主張、日本人はいとも簡単に「極右」だと断じる。この用法は日本語の「極右」には存在しない韓国語独自の用法である。

 例えば、韓国マスコミは橋下徹前大阪市長を「極右政治家」、読売新聞を「極右マスコミ」と紹介するのだが、ヘイトスピーチ条例案を提出した橋下氏や世界最多発行部数を誇る読売新聞を「極右」だと考えている日本人がどれだけいるだろうか?

野田元総理も「極右」、日刊ゲンダイも「極右」

 韓国が極右だとレッテルを張った人、組織の日本国内での評価を見れば、「極右」という漢字語の意味が日本と韓国で全く違うものだと考えなければ説明がつかないような例はいくらでも挙げられる。

 例えば、野田佳彦元総理。2011年に野田氏が首相に就任した時にも韓国マスコミは「日、新しい総理に極右の野田、日韓関係に暗雲?」(東亜日報)、「野田次期総理内定者は歴史認識問題において極右的思考や言動を繰り返してきた」(ハンギョレ新聞)などと、今の稲田氏に対する表現と同じような論調で野田氏を紹介した。理由は、野田氏が過去に「靖国のA級戦犯は戦争犯罪者ではない」と自身の意見を述べたことがあったためである。

 また、日刊ゲンダイ。「日本の極右マスコミ、五輪出場の李承ヨプ叩き」(東亜日報)というタイトルの記事が出たのは2008年のこと。当時、プロ野球巨人軍で活躍していた韓国人の李承ヨプ選手に批判的な記事を載せた日本のメディアを「極右マスコミ」と報道したのだが、ここで東亜日報が批判したメディアが「日刊ゲンダイ」である。万が一、日本国内の媒体が「日刊ゲンダイ」を極右マスコミなどという紹介をしたら、笑いものになるか、無知を批判されるに違いない。保守政党や政権、特に現・安倍政権を最も辛辣に批判している媒体のうちの一つであるからだ。韓国にとってはその日本マスコミの全般的な「論調」よりも韓国、あるいは韓国人をどんなふうに取り扱うか、が性向を判断するための基準なのだろう。

 同様の例としてAERA。2014年11月に韓国の国会図書館で開かれた「嫌韓本・ヘイト本展示会」では朝日新聞系列の雑誌AERAが展示されていた。展示されていた書籍の中身を見ると私の目には「不快」とするほどの内容ではなく、韓国の現状を報告し、苦言を呈しているといった程度の内容だったのだが、それでも、韓国の立場からは「不快」に映るものだったのだろう。韓国で「日本の良心マスコミ」と呼ばれる朝日新聞系列の雑誌であっても、ほんの少しでも韓国の逆鱗に触れれば悪玉になりうるという例である。

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