2024年12月22日(日)

ベストセラーで読むアメリカ

2016年8月2日

■今回の一冊■
FIVE PRESIDENTS
筆者Clint Hill 出版社Gallery Books

 アメリカは今年、4年に一度の大統領選がある。共和党候補のトランプ旋風の影響で、今年は特に大統領選への注目度は高い。ベストセラーリストでも大統領に関連するタイトルが目につく。党派色が強くスキャンダラスな内容で売り上げを伸ばす書籍も出ている。しかし、本書FIVE PRESIDENTSはそうした露悪趣味とは一線を画す。

ケネディ大統領暗殺の現場に居合わせる

 大統領の護衛を担うシークレット・サービスで17年間勤務した筆者による回想録だ。といっても、意外な暴露話が相次ぐという内容ではない。大統領の身近で警護を担当するなかで垣間見た大統領たちの素顔を、おさえた筆致で描き出す。むしろ、読者は物足りなさを覚えるかもしれない。しかし、筆者のシークレット・サービスでの誠実な働きぶりとあいまって、色眼鏡を通さない大統領の実像が浮かび上がる佳作だ。

 5月22日付のニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリスト(単行本ノンフィクション部門)に9位で初登場し、7月中旬にかけ8週連続でベストセラーリスト上位に顔を出した。7月3日付では5位に浮上していた。

 ちなみに、筆者はケネディ大統領が1963年にテキサス州ダラスで暗殺された際、現場に居合わせたシークレット・サービスの一員として有名だ。ケネディ大統領を襲った一発目のライフル銃の射撃音に即座に反応し、大統領が乗るオープンカーの後部に駆け上がり、錯乱するジャックリーン・ケネディ大統領夫人を座席に引き戻したシーンがビデオ映像として残っている。ドキュメンタリー番組などで、その映像をみたことがある方も多いだろう。

 さらに、ついでに付け加えると、筆者は当時、大統領ではなく大統領夫人の警護を担当していた。ケネディ大統領夫人の警護を担当した経験をもとに、2012年にはMrs. Kennedy and Me (邦訳は「ミセス・ケネディ:私だけが知る大統領夫人の素顔」)という回顧録も出版しベストセラーとなった。


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