当時の日本はアメリカの大統領が足を踏み入れられない危険な国だったわけだ。いまからは想像もできない時代が日本にもあったということだ。いまのアメリカ人の読者は、こうしたエピソードをどう受け止めるのだろうか。基本的に内向き思考のアメリカ人の頭の中に、日本の悪いイメージだけが残らないように祈りたい。
ベストセラーは多くの人が読む本だけに、そこに盛り込まれている何気ないイメージやメッセージは、広く大衆に刷り込まれる可能性があるだけに、軽視できないのだ。
シークレット・サービスの管轄はなぜ財務省?
さて、最後にトリビアをひとつ。アメリカのシークレット・サービスはどの行政機関の管轄かご存知だろうか。FBIなどが真っ先に頭に浮かぶ人が多いだろう。実は、答えは財務省だ。シークレット・サービスはもともと別の任務を担っており、後から大統領の護衛という任務が加わった歴史的な経緯がある。本書でも次のように説明がある。
The U.S. Secret Service is one of the oldest law enforcement agencies in America, created in 1865. Its original mission was to investigate and prevent counterfeit currency, which was rampant after the Civil War and threatened to destabilize the country’s economy.
「米シークレット・サービスは1865年に設立した、アメリカの中でも最も歴史がある法執行機関のひとつだ。そのもともとの任務は貨幣の偽造を捜査し防止することだった。南北戦争の後、偽造が横行し国の経済を不安定にする恐れがあったのだ」
さまざまな薀蓄を身につけられるのもまた、ベストセラーを読む楽しみである。
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