2024年12月23日(月)

ベストセラーで読むアメリカ

2016年8月2日

「強いアメリカ」の象徴・アイゼンハワー

 本書の副題にMy Extraordinary Journey with Eisenhower, Kennedy, Johnson, Nixon, and Fordとあるように、1950年代後半から1970年代半ばにかけ、筆者はアイゼンハワーにはじまりケネディ、ジョンソン、ニクソン、フォードまで、計5人の大統領を間近でみてきた。

 大統領を守るという職務に忠実だった筆者は、個々の大統領に関する批評を極力避けている印象が強い。しかし、エピローグの中で、この5人の大統領について総括した部分が端的に、それぞれの政治家の歴史的な位置づけや、アメリカにおける一般的な評価を映していると思われるので参考にしたい。

 The five presidents I had the privilege to serve could not have been more different: Eisenhower, the revered general; Kennedy, the charismatic, young intellect; Johnson, the unreserved, deal-making politician; Nixon, the calculating, opportunistic introvert; and Ford, the ordinary man thrust into power.

 「わたしが光栄にも仕えさせていただいた5人の大統領は、それぞれまったく違うタイプだった。アイゼンハワーは崇拝される将軍、ケネディは若くて知的なカリスマ、ジョンソンは強気の『決める』政治家、ニクソンは計算高く日和見主義で自己中心的、そしてフォードは、たまたま権力を手にした普通の人間――」といった具合だ。

 第34代大統領(1953-61)のアイゼンハワーは西ヨーロッパ連合軍最高司令官として第二次世界大戦を終わらせた英雄で、アジア諸国や南米諸国を歴訪しても、各国で大歓迎を受ける。大統領の護衛を担当する一員として各国の歓迎ぶりに素直に感動する記述が本書の前半には目立つ。国際的にも支持を受ける強いアメリカの象徴として、アイゼンハワーは5人の大統領のなかでも最も尊敬される人物として描かれる。

 ところが、アメリカはその後、ケネディ大統領の暗殺、公民権運動による社会的な混乱、泥沼化するベトナム戦争など、かつての輝きを失っていく。第36代大統領(1963-69)のジョンソンも、さまざまな改革を推進する一方で、ベトナム戦争の戦況悪化で夜も眠れず苦しむ姿を筆者は回想している。第37代大統領(1969-74)のニクソンの時代には、筆者は副大統領の護衛に回されたこともあり、大統領に関する直接的なエピソードは減るものの、ウォーターゲート事件で揺れる大統領周辺を冷ややかに描いている。


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