2024年12月2日(月)

WEDGE REPORT

2016年8月31日

 日本の夏を代表するスタミナ食品といえば鰻だ。特に「土用の丑の日」ともなれば、暑い夏を乗り切ろうと多くの人が鰻を買い求め、あるいは鰻屋に足を運ぶだろう。

 土用の鰻ではないが、韓国にも同様の風習がある。三伏(初伏、中伏、末伏)と言われる日に暑い夏を乗り切るためのスタミナ食品を食べる風習だ。三伏の日の料理として最も代表的なものは、最近では日本でも韓国料理の一つとしてよく知られている「参鶏湯(サムゲタン)」である。鶏の腹の中にもち米を詰め、高麗人参などの薬味とともにじっくり煮込んだ料理で、「夏は鶏にとって受難の季節」という冗談も言われるほどの人気メニューだ。

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 ところで、韓国で夏に「受難の季節」を迎える動物は鶏だけではない。三伏の日に、特に中壮年の男性にスタミナ料理として人気が高い「犬」である。ただし、「犬肉」は女性や動物愛護家たちから非難の対象となっている食品でもある。そのため近年では犬肉賛否論争は夏の風物詩といってもいいほどに毎年飽きもせず繰り返される終わりのない論争となっている。

 賛成派は韓国の食文化であって強制的に禁止すべきではないと主張し、反対派は動物保護及び海外から見た韓国のイメージに傷がつくと主張、屠殺及び販売の禁止を訴えている。当分結論が出そうにないこの論争は、韓国社会の世相、価値観を見極めるための好事例でもある。

犬肉取り締まりのきっかけ
1988年 ソウルオリンピック

 食用犬肉に対する論争が最初に起こったのはソウルオリンピック招致が成功し、韓国が世界の注目を集め始めた1983年頃のことだ。海外の動物愛護団体が韓国の食文化を非難し、オリンピック開催反対運動を始めたのだ。当時の韓国にとってオリンピックは初めて韓国で開催される国際的な大型イベントであり、韓国を世界にアピールするための最高の機会だと捕らえ、国家的なバックアップのもとに準備が進められていた。


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