2024年12月22日(日)

ドローン・ジャーナリズム

2016年9月7日

 欧州ではメディアの空撮や農業に広くドローンが使われ、アルプスではドローンによる無人郵便・宅配事業の試験運転が始まった。現場検証や行方不明者の捜索に役立てたい警察や保線作業の効率化を目指す鉄道事業者もドローン導入を検討。

 アントニ・ガウディの没後100年の2026年に完成を目指す未完の建築物サグラダ・ファミリア(スペイン)の工事にもドローンによる3次元(3D)測量技術が使われる予定だ。利用者の激増で旅客機とのニアミス、原発上空の飛行例も報告される一方で、ドローンを探知して墜落させる最先端テクノロジーにも注目が集まる。

 「世界初の空飛ぶ牧羊犬Shep」が米紙ウォール・ストリート・ジャーナルで紹介されたのは昨年4月。「Shep」とは実際の牧羊犬ではなく、4基のプロペラを持つ中国製ドローン「Yuneec Typhoon Q500」。

 アイルランド南東部カーロウで広さ100エーカーの農園を営むポール・ブレナンさん(40)は兄弟で150頭の羊を飼っている。牧羊犬が年老いたため、14年4月、ドローンを1300ドルで購入。空から羊の群れを追わせたところ、想像していた以上にスムーズに羊を移動させることができた。

ドローンを使って牧羊をするアイルランドのポール・ブレナンさん
(写真・PAUL BRENNAN)

 空から眺めるアイルランドの田園地帯は雄大で、夏の日差しを浴びて様々な緑の色に変化していく。風に波打つ黄金色のトウモロコシ畑。写真が嫌いで1枚も撮ったことがなかったブレナンさんはドローンで初めて写真を撮影し、その魅力に取り憑かれた。続いて動画を撮り、編集してソーシャルメディアにアップするようになった。

 昨年3月に、動画投稿サイトのYouTubeにアップした「Shep The Drone 世界初のドローン牧羊犬」は、早送りした羊のコミカルな動きが人気を集め、77万回以上も視聴された。米FOXニュース、英BBC放送でも紹介された。「空から見た農業とトラクターなどの農業機械はいつもと違ってハッとするほど美しかった。それで地域の生活を空から撮影して記録しようと思ったのです。私たちの農園では牧羊にしか使っていませんが、農作業におけるドローンの可能性は幅広くあります」とブレナンさんは話す。

 ドローンで撮影した写真や動画をもとに農地や牧草地の3Dマップをつくる。それを活用して農作物の生育を管理し、病害虫を早期発見してピンポイントで農薬散布や害虫駆除、肥料散布を行うと、農作業の効率化とコスト削減を図ることができる。

 アイルランドでは昨年12月から1キログラム以上、25キログラム未満のドローンを所有する者はアイルランド航空局への登録が義務付けられ、16歳以上という年齢制限も設けられた。25キログラム以上のドローンは普通の航空機と同じ扱い。「自分で農作業に使う場合には免許は要りません。政府は未来のテクノロジーが普及するよう促しています」とブレナンさんは声を弾ませた。


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