2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月22日

 ウォールストリート・ジャーナル紙が8月18日付社説で、対北朝鮮制裁への中国の非協力的な態度を批判し、米政府はなぜ中国の関係企業に二次的制裁を科さないのか、と詰問しています。要旨、次の通り。

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第一義的資金洗浄国

 8月17日、北朝鮮はプルトニウムの生産再開を認めた。驚くべきことではない。解らないのは、なぜ米国が武器取引、貿易や資金洗浄などで北朝鮮に加担する中国企業を一社たりとも制裁していないのかということである。

 1月の4回目の核実験を受けて対北朝鮮制裁措置は、少なくとも紙の上では、大きく拡大された。国連は追加の北朝鮮政府関係者、団体を制裁の対象にしたし、鉱物資源の輸出制限、貨物の臨検、追加の奢侈品、武器、汎用製品へのアクセス制限を決めた。また米議会は北朝鮮と関係する外国企業(ほとんどが中国企業)に対する二次的制裁を科す権限を付与した。これはオバマ政権が北朝鮮全体を「第一義的資金洗浄国」に認定したことから有効な措置と期待された。

 二次的制裁により外国の銀行や商社、港湾は北との取引を続けるか、ドルでの取引を続けるかの選択をしなければならなくなる。それは容易な選択の筈だった。10年前、米が制裁を科した中国のバンコ・デルタ・アジアの事例が示している。バンコ・デルタ制裁は、中国の他の銀行が米の金融システムへのアクセスを失うまいとして対北取引から手を引くことに拍車をかけた。

 しかしこれは、議会が決めた2月の北朝鮮制裁政策強化法による権限に基づき政府が制裁を発動して始めて可能となる。オバマ政権はそれをしていない。
制裁専門家のジョシュア・スタントンは、制裁企業が見当たらないということではないと指摘する。米韓の諜報機関は、脱北者の情報などにより長年北朝鮮の海外隠し資金を追跡してきている。2月の国連報告は、これら資金を持つ北の機関と取引をする数十の中国企業の名前を挙げている。更にそれは、中国銀行が如何にしてその北朝鮮関係取引先が米の銀行を通じて4千万ドルを詐取するのを助けたかにつき詳しく記述している。

 米国は中国が自分のやりたいような方法で制裁を実施するのに手を貸しているとしか思えない。春には、資産の凍結や北朝鮮の銀行の丹東支店の閉鎖など協力の兆しが見られた。当時、本紙(WSJ紙)はそれを称賛した。

 しかし、2008年来幾多の制裁をやる度に、中国の制裁実施は時間とともに架空のものになっている。中国は北に石油を売り続け、石炭や鉄鉱石を買い続けている。今月、中国は黄海での漁業権獲得のため7400万ドルを支払った。これにより北朝鮮は現金を保有するための銀行口座を持つことが可能となった。中国は8月、日本のEEZに落下したミサイルの発射を非難する国連安保理の決議を潰した。

 中国の企業は、自分が制裁を受けるまで対北制裁を実施しないことが明らかである。中国は、一方的制裁は状況を不安定にすると米国に不満を言うが、核開発をする北朝鮮を中国が甘やかすことが根本の問題である。制裁の目的は金正恩に対して核兵器か生存かの選択を強いることだ。中国が金正恩の生命線を握っている。

出典:‘North Korea’s Sanctions Luck’(Wall Street Journal, August 18, 2016)
http://www.wsj.com/articles/north-koreas-sanctions-luck-1471561451


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