2024年12月3日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月14日

 ワシントン・ポスト紙コラムニストのロギンが、8月14日付同紙掲載のコラムで、核先制不使用論について、同盟国などが反対していること、オバマがレガシー作りにこの問題を使用するのは適当でない等として、反対しています。要旨、次の通り。

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核の先制不使用

 オバマの外交レガシー作りが米の同盟国を心配させている。同盟国は米国が核の先制不使用に転換しないよう働きかけている。日本、韓国、仏と英は内々に米国に懸念を伝えた。特に日本は米が核の先制不使用を宣言すれば北朝鮮などに対する抑止に悪影響が出、紛争の危険が高まるとする。安倍総理はそのことを最近ハリス太平洋軍司令官に直接伝えた。

 欧州の同盟国は別の追加的な懸念を持っている。特に英仏は国連安保理常任理事国として米国の核政策との間で隙間ができることに反対している。それは緊急時に大きな調整上の問題を引き起こす。オバマ政権は、あと数カ月しかないが、大統領の不拡散政策推進のため幾つかの方策のひとつとして先制不使用宣言を検討している。しかし、未だ最終決定はされていない。大統領は9月の国連総会での最後の演説で発表したい意向といわれるが、同盟国の反対もあり先制不使用の問題は前進していない。

 いくつかの同盟国は今まで米国から協議がなかったことにも不満を持っている。多くの者が米国の報道で初めて知ったという。同盟国関係者は北朝鮮、中国、ロシア等との通常兵器の紛争のリスクが増大すると主張する。これらの国は核報復の恐怖により通常兵器による攻撃を自制している。先制不使用はこれらの国のリスク計算を変えることになる。

 さらに、一方的な先制不使用宣言は国際規範化に貢献するとはいえないと同盟国は言う。他の国が追随する保証はない。また核兵器の使用は生物化学兵器の使用の抑止にもなっている。オバマ政権は2010年の政策文書の中で初めて核の先制不使用の考えを動かすことを明らかにした。しかし、その後、世界は不安定を増すことになった。他方軍備管理協会のキンボールは、「北朝鮮は通常兵器による攻撃が莫大な報復を引き起こすことを理解しているが、その報復は核でなくてもできる、核で報復する必要がないのであればなぜ核を使用するのか」と言う。

 同じ質問は反対側から次のように問うこともできる。米国の同盟国が抑止力を弱め紛争のリスクを高めるというにも拘らず、なぜ政策を変える必要があるのか。オバマの個人的なレガシーというのは十分な理由にならない。

出典:Josh Rogin,‘U.S. allies unite to block Obama's nuclear 'legacy'’(Washington Post, August 14, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/allies-unite-to-block-an-obama-legacy/2016/08/14/cdb8d8e4-60b9-11e6-8e45-477372e89d78_story.html?utm_term=.60c67725a101


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