ワシントンポスト紙の8月3日付社説が、オバマ大統領がTPP支持の立場を改めて明らかにしたことを歓迎し、大統領選挙後のレームダックの期間に議会承認が得られるよう期待を表明しています。論旨、次の通り。
大統領選挙戦での議論の品位の低下は明らかであるが、政策面での被害は1つの大きな例外を除き概ね封じ込められている。その例外がTPPである。両党の候補ともにTPPに反対である。
トランプのTPPに対する敵意は、米国とそのパートナー諸国との関係に関する彼の疑惑と軌を一にする。クリントンとティム・ケインは解っているが、彼等はサンダース率いる反貿易派の民主党員を取り込むためにTPPに対する従来の支持を放擲した。とどのつまり、オバマ政権が苦労して交渉し、議会の超党派の多数が昨年その交渉権限を認めたTPPは、いずれが選ばれても支持しない。従って、唯一の望みは選挙後のレームダック期間に議会の表決を行うことであるが、共和党のマコーネル上院院内総務がいうように「そのチャンスは非常に小さい」。
8月2日のシンガポールのリー・シェンロン首相との共同記者会見におけるオバマのTPP支持表明は、2つの意味で好ましいものであった。第一に、過去の貿易協定の職へのインパクトについての懸念、また途上国に労働・環境基準を守らせる必要性に言及して、TPP反対論者とは対照的に、意見を異にする人々を、敬意をもって語ったことである。第二に、オバマは問題の争点については譲らなかった。彼はTPPの下では市場開放のほとんどは米国ではなく他国が行うことを指摘し、反対論者には「労働権や環境権のような問題への対応においてTPPよりも現行の貿易ルールの方がどうして好ましいか」を説明するよう求めた。
経済的重要性にとどまらず、TPPは枢要なアジア・太平洋地域における米国の戦略的関与の柱となり、中国の影響力に対するチェックとなるものである。これらの重要性を説明するのは、リー・シェンロンの役回りとなった。彼は他国の指導者、特に安倍首相がとった政治的リスクに言及し、TPPの拒絶は「今後長期にわたり」米国の海外における評価に深刻な害をなすことになろうと警告した。
議会がこの記者会見に耳を傾けることを希望する。オバマは「選挙が終わり、埃がおさまれば、協定の背後にある事実により注意が払われるであろう、それは政治のシンボルや政争の具ではない」と述べたが、オバマが正しいことを希望する。
出典:‘Obama rightfully stands firm on the Pacific trade deal’(Washington Post, August 3, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/obama-stands-firm-on-the-pacific-trade-deal/2016/08/03/10f35c02-59ac-11e6-831d-0324760ca856_story.html