2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月7日

 こういう社説は歓迎できます。オバマ政権が議会承認を得るため、僅かなチャンスを追求することが望まれます。「TPPは修正を要する部分があり、このままでは承認は困難」というライアン下院議長の発言が伝えられており、状況は良くありませんが、トランプが自滅でもして、その魔力から共和党議員が解き放たれるようなことがあれば、チャンスは少しは大きくなるのではないでしょうか。

 この社説は、8月2日のオバマとリー・シェンロン首相の共同記者会見を受けて書かれたものです。この記者会見は一種異色のものでした。冒頭、同首相はTPPが大きな経済的利益をもたらすのみならず、TPPは米国のアジアに対するコミットメントの証であり、戦略的観点から枢要であるとして、その早期の批准を要請しました。

 しかし、それでは言い足りなかったと見えて、会見の途中で同首相は更に発言を求め、TPPが真剣かつ厳しい交渉の結果作成されたこと、いずれの参加国にも利益をもたらすことを説き、「アジアへの関与の観点でTPPには米国の評価がかかっている。TPPは米国が進むべき大きな方向を示している」と述べました。米国をアジアに関与させ続けることを重大な国策とするシンガポールとしては、オバマ政権の間に是非議会承認に漕ぎ付けて欲しいということでしょう。

 以上の過程で、リー・シェンロンは次の趣旨(後段は些か無茶な議論ではありますが)を述べています。

 「米国のパートナーの諸国も政治的リスクを犯して交渉に参加した。しかし、待てど暮らせど花嫁が来ない(TPPが日の目を見ない)となれば、非常に傷つく人が出て来るであろう。例えば、安倍総理は、結局不参加を決定した前任者達と異なり、貫徹し、コミットすることを決断した。もし米国が批准しないとなれば、安倍総理を傷付ける一方、日本との安全保障の関係を傷付ける。日本は米国の核の傘に頼っている。もし米国が貿易について一貫しないのなら、緊急事態において誰を頼りにすればいいのかと問うこととなろう」

  
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