オトナの教養 週末の一冊

2016年11月11日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――科学者というとどちらかと言えば、地味にコツコツと研究をするイメージがありますが、欧米で出会った人たちは個性的な方々ばかりですね。中でも印象に強く残っているのはどなたですか?

伊藤:科学者というと、部屋にこもり研究ばかりで、どちらかというと暗いイメージがあるかもしれません。しかし、10年間で出会った科学者たちは全く逆で、喜怒哀楽やユーモアに溢れていました。そういった人たちの世界を知ってもらいたいと思ったのがこの本を書いた理由の1つでもあります。 

 印象に残っている人ばかりですが、まずスロバキアの国際会議で出会い、そこからEUの公的機関であり、日本では国土交通省の航空局にあたるユーロコントロールへ私を導いてくれたベトナム系フランス人のブー・ドング教授。ユーロコントロール実験センターはパリにあり、本来EU加盟国の国籍を持っているか、もしくはEUの大学に所属していないとEUの予算がついた研究プロジェクトには参加できません。

 しかし、ベトナム系のブー・ドング教授は、同じアジア人として航空管制学が遅れているアジアの科学のために、プロジェクトマネージャーに掛けあってくれました。残念ながらEUの予算がついたプロジェクトには参加出来ませんでしたが、ブー・ドング教授率いる「革新的研究グループ」で研究することが出来ました。

 ブー・ドング教授のように欧米でお世話になった科学者は私利私欲を超え、社会を良くしたいという思いが強い人が多かったのが印象的です。

――他にはいますか?

伊藤:2人目は、私が頑張って動かそうとしても決して動かない壁のような存在だったオランダ航空宇宙研究所のヘンク・ブロム博士です。彼はとにかく厳しく、5年間挑み続けた偉大な科学者です。時には、ミンチのように切り刻んでやりたいなんて思いながら(笑)。例えば論文を共同執筆すると、論文の構成から何まで期日ギリギリまで直しが入り、繰り返し繰り返し訓練させられました。そこで基礎を徹底的に鍛えられたからこそ、現在部下に指導出来るようになったんだと、今となれば感謝しています。

――未来の航空管制システムを設計することが目的で、ヘンク・ブロム博士のチームが開発したTOPAZの使い方を学ぶために、オランダへ渡った伊藤さんでしたが、そのソフトウェアの仕様書がないどころか、担当者が退職し、誰も扱い方がわからなくなったと。そこで伊藤さん自身がソフトウェアを一から作り直すというところに驚きました。その情熱の源とは?

伊藤:ここで負けてたまるかという意地と、科学者としての使命感です。パリやオランダでは周りの研究者たちも使命感を持って研究に取り組んでいました。それに航空管制の分野では後進国である日本人の私を誰も助けてくれませんから、とにかく自分で道を開かないといけない。

 情熱的な人たちと一緒に研究をしていると、そういった情熱や精神は伝染するものなんですよ。

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