オトナの教養 週末の一冊

2016年11月11日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――日本だと論破する議論自体がそもそも成り立たなかったりしますね。欧米の人は議論好きですか?

伊藤:集団の意思決定が、議論で決まるのがヨーロッパで、腕力やエネルギー、タフさで決まるのがアメリカ、そして根回して決まるのが日本という印象があります。

 現在、私は国際航空科学会議の若手部会の委員長で、若手を育てる立場にあります。日本の若い研究者を見ていると、論文は本当に完璧なんです。でも、議論が全くできません。これは日本に限ったことではなく、アジア全般に言えます。もちろん、言語の問題もあるにはありますが、その前段階である議論の構築が出来ないんです。コミュニケーションを取りながら、違う意見を持っている人達を説得し、まとめあげる経験がないんですね。

 例えば、学会の最後ではQ&Aセッションがあり、聴講者が質問します。そこで最悪なのは、1つも質問が来ないこと。次にたくさんの反応や批判があることで、一番良いのは共同研究をしたいと手を挙げてもらえることです。

 日本だと批判は、イジメられたと感じる人も中にはいるようですが、欧米では批判は良いことです。もちろん、人格攻撃は問題外で、科学の土俵の上での批判ですけどね。

 そういう場面で、的はずれな答えになるかもしれないと何も答えられないよりは、キーワードに沿ったことを何かしら話すテクニックも重要です。話しているうちに意見がまとまることもありますからね。こういうテクニックを身につけるには、とにかく場数を踏むことが大事です。

――伊藤さんご自身は、元々議論が得意だったんですか?

伊藤:いいえ、面倒くさいですし、できれば空気を読んでもらえたら、どんなに楽だろうと今でも思いますよ(笑)。もともと一人っ子なのもあって、議論は得意ではありませんでした。でも、大学院生の頃から、海外の現場に放り出され、何をするにしても意見を言わないと存在が消される世界にいましたから、自ずと議論出来るようにはなりました。

――他に欧米での生活で気を付けていたことはありますか?

伊藤:欧米では自分が何者かを見られます。だから、日本の常識の枠に捕われず、私自身はこの世界をどう見ているのかという視点を常に持つように心掛けました。

 他には、誰かと話をする場合、とりとめのない話をするのではなく、相手と時間を共有しているからこそ、自分が気付いたことや議論の種になることを探してコミュニケーションを図りました。

――アジアは航空管制科学が遅れているとありましたが、この10年間でその差は少し埋まりましたか?

伊藤:研究分野として航空管制が広まってきましたし、日本航空宇宙学会にも航空管制部門が新しく出来ました。

 また、国際会議でも日本の研究の認知度は上がっています。そのお陰で、国際共同研究をしたいという人も増えています。

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