2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年11月28日

 この論説は、ロシアからウクライナを迂回して北ヨーロッパにガスを供給するノルドストリーム2(注:ノルドストリーム1は2011年にすでに稼働済)に反対したものです。

 このプロジェクトはドイツとロシアが推進していますが、この論説に挙げられている東欧諸国の他、イタリアも反対しています。米国のケリー国務長官も反対を表明しています。

 ノルドストリーム2により、ロシアが欧州にガスを供給する現在のウクライナ経由のルートの重要性が相対的に低下するので、ウクライナへのガス供給を止めやすくなります。

EU分断のトロイの馬

 東欧諸国は、ウクライナ経由のガスを、使用または通過させ利益を得ていますが、ウクライナ経由のガスが来なくなるとガス供給が滞り、通過料が入らなくなる可能性があります。それで、これらの諸国は、ノルドストリーム2はロシアのガスへの依存を減らすというEUの基本政策に反し、ロシアは、ウクライナ、東欧諸国への圧力を加えるという政治的な意図をもってプロジェクトを推進しているので、EU分断のトロイの馬である、と反対しています。

 ドイツのメルケル首相は単なるビジネス、企業間の問題であって、政府としてとやかく言う問題ではないとの姿勢ですが、ドイツ批判の声は強くなってきています。ロシアはウクライナ問題のみならず、シリアでの戦争犯罪とも言うべきアレッポ空爆で非難されており、状況はノルドストリーム2の推進にとっては好ましくありません。

 今後どうなるかはまだ判りませんが、Brexit、難民、ギリシャなどに加え、この問題もEUを引き裂くような問題です。欧州人はしたたかであり、結局は妥協案を見出していくと思っていますが、ドイツがゴリ押しするとドイツ横暴の批判が強まるでしょう。

 EUはこういう問題にも直面していることは承知しておくべきでしょう。

  
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