2024年11月22日(金)

安保激変

2017年4月13日

 会談では、米側が北朝鮮と取引がある中国企業を制裁対象にする意向を伝達したとみられ、実際トランプ政権は制裁対象に中国4大商業銀行の1つである中国銀行を含めて検討している。他方、中国は米韓による軍事演習の停止を要求し、米朝の直接対話も提起したようだ。北朝鮮問題に関する双方の立場に相当の開きがあることはあきらかで、米側はこの会談で中国側の譲歩を勝ち取ることは考えておらず、米側の本気度を中国側にわからせることを目的としていた。

「習主席が夕食会の場でシリア空爆に理解を示した」のか

 そもそも、この米中会談は中国側の要請によって実現したが、中国側にとって最大の懸念は台湾問題だった。トランプ大統領は就任前に「1つの中国政策」の見直しを示唆し、中国にとってもっとも敏感な問題で中国側を揺さぶった。2月初めの米中電話首脳会談で、トランプ大統領は「1つの中国政策」を尊重すると述べたが、秋に共産党の最高機関である党大会を控えた習主席は、何としても直接の首脳会談でその言質を取る必要があった。

 他方、トランプ政権側は、北朝鮮問題で中国に圧力をかけるためにこの会談を受け入れた。中国側が2月の日米首脳会談並みの扱いを求めたため、トランプ大統領は安倍総理を招待した「マール・ア・ラゴ」に習主席を迎えることにした。しかし、トランプ大統領は夕食会のデザートを食べている間にシリア空爆を知らせるという屈辱的な形で習主席の面子を潰し、中国側が期待した1つの中国政策に言及することもなかった。

 特に、米側の発表では、習主席が夕食会の場でシリア空爆に理解を示したとされているが、伝統的に対外介入に反対することを原則とする中国政府が空爆に理解を示すとは考えにくい。仮に習主席が米軍の空爆に理解を示したとすれば、失脚につながりかねない失言である。実際のところ、習主席は、化学兵器の使用には反対するが、軍事力による介入も支持しないという原則論を述べたようだが、米側によって空爆に理解を示したと発表されたことは習主席にとって後を引く問題となるかもしれない。

会談後も続く両国の駆け引き

 トランプ政権は、北朝鮮問題解決への決意を示すため、米中会談後も様々な動きを見せている。核兵器を在韓米軍に再配備することを検討していることが報道されただけでなく、3月に米韓演習に参加したばかりのカール・ヴィンソン空母打撃群を再び朝鮮半島近海に呼び戻した。トランプ政権は、東南アジア各国に北朝鮮労働者の追放を要請することも検討している。

 4月12日にはトランプ大統領が再び習主席に電話をかけ、北朝鮮への圧力を迫った。これに対し、習主席は「平和的な方法」での解決を主張し、北朝鮮への軍事的圧力を強化するトランプ政権も牽制した。他方で、北朝鮮が6度目の核実験を強行した場合は、中国政府が北朝鮮への重油の提供の中断や、国内の北朝鮮労働者の追放、北朝鮮観光の制限などを検討していることが漏れ伝わるようになっており、トランプ政権の意向にある程度応えることも検討していることがうかがえる。


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