質問:「離乳食や幼児食は薄味にしましょう」と言われますが、加減がよくわかりません。成長してくるとダシの味だけでは物足りないだろうと思うのですが……
答え:母乳やミルクに含まれる塩分はごくわずかで、それよりも少し濃くなるだけでも乳児にはかなり濃く感じられるはずです。大人と同じものを食べるようになると、摂取する塩分はグンと増えてしまうので、「ちょっと薄いかな」と思うくらいの味付けに慣れることをおすすめします。
答える人 石橋涼子先生(石橋こどもクリニック院長)
厚生労働省が5年ごとに改訂している「日本人の食事摂取基準」の最新2015年版によれば、1日あたりのナトリウム摂取量の目安は0~5カ月の子どもで1日に100mgで、食塩に換算すると0.3g、6~11カ月で600mg、食塩換算で1.5gとされています。その後は年代別に3~8g未満の食塩摂取量になることが目標とされていますが、これは「必要量=必ず摂らなければいけない量」ではなく、それよりかなり多い量です。あくまでも全国実態調査データから割り出し、摂りすぎにならないように定められためやすと言えます。実際は、成人では多くの人がこれより多い食塩を摂っているのが現状です。
(29ページの表参照:http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf)
母乳100cc中のナトリウムは約15mg(粉ミルクはメーカーによって異なりますが15~19.5mg)とかなり少なく、母乳やミルクだけ飲んでいる間のナトリウム摂取量はわずかです(これが前記の摂取基準5カ月までの100mg=食塩換算0.3gですね)。食べて感じる「塩味」は他の旨味成分などに影響されるものだとはいえ、やはりこの量はかなり少なく、食味という点では赤ちゃんは薄味に慣れていると言っていいでしょう。
6カ月過ぎてこれが600mgまで増えているのは離乳食の塩分で、言い換えれば、食事から摂る食塩量は母乳やミルクよりもはるかに多いのです。ちなみに、「塩少々」「塩ひとつまみ」などといった表現は、一般的には「少々=親指・人差し指でつまんだ量=0.3~0.5g程度」「ひとつまみ=親指・人差し指・中指でつまんだ量=1g程度」とされています。上記の6~11カ月の基準に当てはめれば1食あたり塩少々、ということになります。
もちろんこれを多少上回ったからといって、非常識なほど大量の塩分を摂るのでない限りすぐに健康を害するわけではありません。しかしいったん濃い味に慣れてしまうと薄味に戻すことは難しく、とくに日本の食習慣ではどうしても塩分多めになりがちなので、意識して薄味にすることは心がけたいものです。
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