2024年4月27日(土)

70点の育児入門

2017年4月13日

質問:タミフルを服用すると子どもが異常な行動を起こすというのは本当でしょうか? 家族にインフルエンザ患者が出ると病院でも服用を薦められますが、念書のような書類にサインさせられますし、なんだか不安です……。

答え:インフルエンザそのものでも異常行動が起きることがわかってきており、そもそも異常行動がタミフルのせいなのかどうかは区別は難しいのが実際です。これとは別に、インフルエンザの重篤な合併症もほとんどが発症後短時間に起きるものです。タミフルを服用するしないにかかわらず、インフルエンザの初期は注意してみていたほうがよいのです。

答える人 石橋涼子先生(石橋こどもクリニック院長)

石橋涼子(いしばし・りょうこ)
東京大学医学部卒業。大学での研修の後、NICU、総合病院、障害児施設などに勤務。1996年からまつしま産婦人科小児科病院(現・まつしま病院)小児科部長、2005年1月に東京・江戸川区小岩に石橋こどもクリニックを開院。

 タミフル(抗ウイルス剤オセルタミビル)は日本では2001年から保険適用となり、インフルエンザ治療薬として広く使用されています。インフルエンザの症状が出てから48時間以内に服用すれば、ほとんどの場合、熱は早く下がります。

 誤解が多いのですが、インフルエンザそのものはタミフルなどの抗ウイルス薬を使わなくても、多くの場合自然に治る病気です。普段元気な成人や年長児で症状が軽ければ、一律に飲まねばならないというものではありません。一方、喘息など呼吸器の症状がひどくなりやすい人や、もともとの抵抗力の弱い乳幼児・高齢者が、入院を必要とするほどの症状まで進展する危険を抗ウイルス薬によって減らすことはできます。

 一方、05年にタミフルを服用していた二人の患者が異常行動を起こし、転落などで無くなるという事故があり、その後も服用後の異常行動が複数報告されたため、タミフルが異常行動の原因になるのではないかとして10歳以上の子どもには慎重に使うべきとされました。

 しかし実際は、インフルエンザそのものでも高熱時の異常行動は起こります。またタミフル以外の薬を服用したときでも異常行動が起こったとの報告もあります、異常行動はタミフルや他の薬のせいなのか、インフルエンザのせいなのか、決めつけるのは難しいのです。まとめると、タミフルを「飲む必要がない」場合は実際は多々あるが、「飲まないほうが良い」ということはほとんどない(アレルギー症状が出る場合は別です)、と言えるでしょう。

 また、10歳前後の子どもの異常行動が問題にされますが、これは熱にうなされながらも飛び降りたり外に走り出したりなどの行動ができるだけの体力があるのもひとつの要因です。幼児でも「変なことを言っていた」「わけもわからず走り回った」などということはありますが、小さい子どもは多少暴れても保護者が対処できますから。

 つまり、異常行動の原因がタミフルなのかどうかはともかく、インフルエンザの発症後3日くらいはなるべく目を離さないほうがよい、ということになります。異常行動そのものは、翌朝にケロッとしているようであれば、一時的なもので心配はいりません。逆に異常行動やけいれん、意識障害がどんどんひどくなっていくのであれば、むしろインフルエンザ脳症などの疑いが出てきます。

 インフルエンザ脳症は多くは発熱して数時間後から1日以内に急激に症状が変化し、上記のような神経症状が現れます。致死率も高い重い病気ですが、実際はインフルエンザの診断がつく前に重篤な症状になることが多いので、インフルエンザと診断されているいないにかかわらず、このような場合はすぐに救急車を呼んでください。

  
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