2024年12月10日(火)

したたか者の流儀

2017年6月30日

 この動きの中で、いくつかの企業が、①持ち合い株は保有しない。②原則不保有または解消の方向。③保有するが経済合理性を保有継続の判断基準とするなどの指針を発表している。

 すなわち、外人株主がプレゼンスを増すなか、企業同士の株式持ち合いも容易ではなくなってきている。その中で、主体別保有で2割弱の個人株主に対して注目が集まっているといえる。
加えて東証第一部の上場株としていくつかの上場廃止基準が適用されるが、その一つに株主数基準がある。第一部上場を維持するためには所要株主数2000人が必要とされている。

東芝は国技館で焼き鳥弁当を提供

 当然、数年の猶予期間がもうけられているが、一朝に2000人を確保することは、容易ではない。したがって、常に個人株主へのIR活動をおろそかにすることはできない。

 機関投資家の硬直した保有政策、すなわち一度ことが起きた場合、コード上保有しきれなくなる場合もある。逆に個人投資家は株価や企業収益には影響を受けずに保有する土壌を持っている。そのために、いわゆるファン作りが、きわめて重要になっている。 

 一時期、東芝は国技館で焼き鳥弁当を提供するとこで、3000名以上の株主を集めたこともある。また、たとえばリーマンショック時に廃止されたが、藤田観光株主の楽しみは、総会後の椿山荘での株主懇親会だったそうだ。すなわち個人株主のインセンティブは、通り一遍の経済合理性にないことだろう。

 現在、グロス5000万人の個人株主、ネット千数百万人の個人株主をいかに量的質的に拡大するかが、わが国の資本市場の将来を占うことは明白であろう。「貯蓄から投資へ」などという高邁な思想だけではなく、自社の商品の販売拡大にも個人株主は貢献する可能性もある。

 そんな中、高性能カメラで会場の参加者を撮影しまくる企業や、株主から発言があると大至急通報体制をとる企業もまだあるようだ。

 個人株主は株式市場のあだ花なのだろうか。それともこれから花開く蕾みなのだろうか。真摯な個人株主の質問に対して、木で鼻をくくったような議長の対応を見る度に、この国の資本市場の将来に不安を感じてしまう。

 「時間も押しておりますので、最後にあとお一方の質問をお受けします」で終わらせる紋切り型。

  
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