ある成年後見人の手記

2017年8月14日

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松尾康憲 (まつお・やすのり)

ジャーナリスト

1953年生まれ。76年共同通信社入社。87年から2004年まで北京特派員、上海支局長、ハノイ支局長を歴任。現在は放送報道局委員。著書に『現代ベトナム入門 ドイモイが国を変えた』(日中出版)、共訳書に『中国の禁書』(新潮選書)、『性愛の中国史』(徳間書店) 

 被後見人の死亡後の葬儀や埋葬等の手続きを後見人ができる、法的解釈もあることが判明した。書物『成年後見における死後の事務』(日本加除出版、編者・松川正毅)には、次のように明記されていた。

─―民法に直接の明文規定はありませんが、解釈論上、被後見人の死亡は成年後見の絶対的終了事由とされています(156頁)

委任契約に関して、わが国では、最高裁判決が、死亡によっても終了しない可能性を認めています。後見契約であれば、いわゆる死後事務を行うことが可能とされています(2頁)

実際問題として、後見人が遺体の引取りをせざるを得ない場合が少なくありません
(144頁)

死亡届の提出については、これが受理されて初めて、埋火葬許可証が交付され(墓地5条、8条参照)、葬式が可能となるところから、後見人からの提出も認めるよう強く要望されていたところ、2007年に、戸籍法87条2項が「同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人及び任意後見人も、これをすることができる。」と規定するに至りました(34頁)

現実には、後見人が葬式に関わらざるを得ない状況が生じ得ます。これに葬式費用支払の問題がからんできます(156頁)

後見人が葬式を執り行う法的根拠としてはまず、応急処分義務(民654条)が考えられます。(中略)義務ですから、葬式の実施の法的根拠をここに求める場合には、急迫の事情があれば、後見人は葬式をしなければならないことになります。葬式をしなければ責任を問われる可能性が出てきます(157頁)

そこで、義務とまではいわず、事務管理(民697条)を法的根拠とする考え方もあります。(中略)家庭裁判所には、葬式を含む死後事務を、「成年後見人の義務とまではいえないから委任終了時の応急処分義務に求めるのは相当ではなく、事務管理」という『ほかないであろうか。』」として、この立場に立つ裁判官もいる(157頁)

生活保護法に定める葬祭扶助の対象となるような最低限度の葬祭であれば、後見人が行うことも認められるでしょう。(中略)現実には、社会的に見て相当な範囲の費用であれば、被後見人の財産、つまり相続財産から支払うことを認めているように思われます。現場では、家庭裁判所も立て替えておいてくださいとは、とてもいえるものではないのでしょう(159~160頁)─―

崩れ落ちた法的根拠

 被後見人が死亡すれば成年後見は終了するが、遺体を放置されては困るので、死後事務という概念を設けて、後見人に最後の務めを担わせる、という内容だ。成年後見制度が欠陥だらけだから、バラック建築の建て増しのように、ごちゃごちゃ解釈を補わねばならないのだろうと、すこぶる納得した。いずれにせよ、後見人は遺産を用いて葬儀をできるのだ。「事務連絡」の法的根拠は崩れ落ちた。

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