5年前、日本は小泉政権下。総理は頑として靖国神社を参拝し続け、日本は国連での常任理事国入りを目指していた。要するに5年前の「反日騒動」は、そうした日本の政治的な変化をけん制し、日本の財界や民間から、さらなる経済的なメリットを得続けんがために、中国政府が仕掛けた「反日ゲーム」なのである。
ところが、日本のマスメディアは往々にして、中国側の仕掛けの本意を読めない、あるいは意図的に読まない場合が多いため、「反日暴動」の烈しさばかりを強調して伝え、挙句、この問題を、日本国民に「歴史認識の問題」なのだと捉えさせようとしていた。
田舎の新聞スタンドでも反日一色
ところで、今回書く予定であったテーマは、言論NPOなる日本側の団体と中国日報社が行なったと去る8月に報道された「日中共同世論調査」の結果についてである。
調査結果の総括は、「中国人の対日イメージは改善傾向が顕著であり、今後の日中関係についても楽観的な見方が強まっている一方で、日本人の中国に対するマイナスイメージはなかなか改善が進んでおらず……」というものだ。
この内容自体にはなんら特筆すべきものもないが、この調査が開始されたのが、5年前のあの反日暴動の年であったことを思うと、ある種の感慨がある。
5年前の反日暴動の直前、筆者は中国の田舎を旅していた。このとき驚いたのは、町の中心にのみある新聞・雑誌を売る粗末なスタンドの景色であった。
5~6紙のタブロイド型の地方紙がズラッと並べられた棚はまさに反日一色。この日の誌面は、日本が竹島を領土としていることに対し、韓国人の活動家らが激しく抗議している様子を伝えていたが、実のところは、「われわれも日本の帝国主義復活」に対抗すべきではないか、と読者を煽りに煽る内容であった。
およそ「竹島」も国際ニュースも関係なかろうと思われるほど鄙びた町にまったく不釣り合いな、ヒステリックな調子の「反日」が新聞スタンドに躍っていた。
「反日デモ」と「トロール船」に一貫する事柄
いうまでもないことだろうが、報道の自由が保障されない中国では、地方紙、タブロイドといえども、当局の意向に沿わない内容の報道がされることはない。
しかし、田舎町の新聞スタンドの風景は、同行していた中国の友人も苦笑するほどに見事なプロパガンダであり、近いうちに何かが起こると予感させた。案の定、2週間後には、北京、上海など大都市での若者の乱暴狼藉へと発展していったのである。
話を「トロール船」船長逮捕の件に戻すと、実は中国の「トロール船」についても、過去に産経新聞のみではあるが、類似したケースの報道がある。
それは昨春、場所は日本ではなく、南シナ海にて違法操業していた中国の「トロール船」5隻が、米海軍の音響測定艦「インペッカブル」を取り囲んだとの情報である。
このとき、インペッカブルは、海保の巡視船と同様、警告のための放水を行ない、無線を通じて航路を空けるよう求めた。ところが、「トロール船」は航行妨害を続け、その後、軍艦を取り囲んだというのである。