サムライ弁護士の一刀両断

2017年11月28日

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不動産特定共同事業法による規制の壁

 さて、このような不動産のリノベーション・プロジェクトを行う場合、出資者に対し、プロジェクトが生み出した収益・利益の中から配当金を支払うことを約束することが考えられます。

 出資者に対して収益・利益の分配や配当が想定される不動産プロジェクトを実行したり、出資を呼びかけたりすることは「不動産特定共同事業」にあたる可能性があり、その場合、不動産特定共同事業法による制限を受けます。

 不動産特定共同事業を行う場合には、主務官庁や都道府県知事の許可が必要です。プロジェクトを実行する会社が許可を受けるためには、最低でも資本金が1億円以上なければいけません。そのため中小の不動産業者が不動産特定共同事業を行うことは会社の規模から難しく、空き家のリノベーションのような小規模のプロジェクトには向かない側面がありました。これは、不動産特定共同事業への出資をクラウドファンディングで募集する場合であっても変わりません。

 さらに、不動産特定共同事業を行う場合には、法律が定める厳格なルールに従う必要があります。このうち、クラウドファンディングとの関係で課題となっていたのが書面の交付義務です。不動産特定共同事業では、契約締結の前や締結時などに、取引内容などの重要事項を記載した書面を出資者に交付する必要があります。そして、これまではこれらの書面をインターネット上で提供することは認められていませんでした。

 先ほど述べたとおり、クラウドファンディングの強みとして、多数の投資家から出資が受けられることや、インターネットの活用により営業コストが削減できるというのがありました。これに対して、資金提供に応じた多数の出資者に対して書面を郵送しなければならないとなるとコストがかさみ、インターネット取引ならではの強みが活かしきれないということになります。

 これら、「規模の大きな会社でないと難しい」「説明書面の発行コストがかかる」ことが壁となり、先ほど述べたような方法による空き家再生を目的とした投資型のクラウドファンディングは、今まで実施することが容易ではありませんでした。

クラウドファンディングに向けた法改正

 さて、この度の不動産特定共同事業法の改正により、先ほど述べたような不動産投資案件に対する出資をクラウドファンディングで募集するための制度の整備が図られました。まず、出資者に交付する必要のある書面について、一定の場合にインターネットでの提供が認められるようになりました。

 事業者側としては、インターネット上で業務を行うための社内体制を整えたうえで、当局の許可や登録を受ける必要があるものの、条件さえクリアできれば、クラウドファンディング化に向けたボトルネックであった書面提供の問題を解決することができるようになったといえます。

 また、法改正により、出資者の出資金額が100万円、出資総額が1億円を超えないといった小規模な範囲でのみ不動産特定共同事業を行う場合に限り、「許可」ではなく、より手続の簡単な「登録」により実施することが可能になりました。その場合に必要な最低資本金についても1億円から1000万円に引き下げられています。これにより、これまで不動産特定共同事業には縁のなかった中小規模の不動産事業者も、小規模案件に限り不動産特定共同事業を行うことができるようになりました。

 クラウドファンディングは、一般の個人投資家から少額の出資を受けることになりますので、あまり巨額のプロジェクトには適しません。小規模案件の規制緩和がなされたことにより、不動産投資のクラウドファンディング化が進むことが期待されています。

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