2024年12月9日(月)

サムライ弁護士の一刀両断

2017年8月24日

 先日、インターネット上の仮想通貨(ビットコイン)を用いた“マイクロトレードサービス”である「VALU」で、著名なYou Tuberが、不当な取引を行っていたとして騒動となりました。

 同氏は、VALU上で発行する自分自身の「VA」について、SNSを通じて優待を仄めかすなどしてネットユーザーに対して購入を促し、高値が付いたところで自らが保有する「VA」を全て売りに出したとされています。これにより、「VA」の価格は暴落してしまいました。

 また、同氏がVAを売りに出す直前に、所属する事務所の関係者がVAを暴落前に売却していたというのも騒動の一因となったようです。

 このような方法によるVA取引に対しては、何らかの法規制は及ぶのでしょうか。

(alfexe/iStock)

「VALU」とは?

 まず、今回話題となったVALUとはどういうサービスでしょうか。

 VALUは、運営会社によると「ビットコインを用いたマイクロトレードサービス」とされていますが、簡単にいえば、個人が上場会社の株式のようなものを発行して資金調達することができるサービスです。

 上場会社の場合、事業を行うため、株式を発行することで事業資金を調達することができます。この場合、投資家などは会社に出資することで株主になります。

 いったん株主となった投資家は、自分が保有する株式を自由に第三者に売却することができます。売却時に会社の業績が向上しており、株価が値上がりしているような場合には、投資家は株式の売却によって利益を得ることができます。逆に会社の業績が低迷して株価が値下がりしているような場合、投資家には損失が生じることになります。

 VALUは、アーティストやクリエイター、ブロガーなどの著名性のある「個人」が、自分自身の活動内容によって価値が上下する「株式のようなもの」(VALUの中では「VA」と呼ばれます)を発行し、それを一般のネットユーザーに買って貰うというサービスです。取引は仮想通貨のビットコインで行われますが、ビットコインは現実の通貨と交換可能ですので、実際にお金を出して売り買いしているのとほぼ変わりません。

 また、いったん発行された「VA」は、上場会社の株式と同様にユーザー間で取引され、流通することになります。

上場株式と似て非なる「VA」

 VALUは、上場会社が株式を発行して資金調達する仕組みや、上場株式が市場で流通する仕組みを、個人に当てはめたようなサービスだと言えるでしょう。

 もっともVALUにおける「VA」は、株式ではありません。

 「株式」とは、会社法のルールにより株式会社が発行するものを指しますので、個人が発行するものは「株式」にはなりません。

 また、株式の場合には、株主が株主総会を通じて会社の経営に直接的な影響を与えることができるのに対し、VAの場合、発行主体である個人の活動に直接的な影響を与えることはできないという違いもあります。

 さらに、VAには株式と異なり配当金の制度はありません。もっとも、VAの発行者は、自分のVAを保有する人に対して任意の優待を設定することができます。

 VAは「上場株式と似て非なるもの」ということができるでしょう。


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