2024年12月22日(日)

サムライ弁護士の一刀両断

2016年5月23日

 LINE株式会社が関東財務局から、資金決済法上必要とされる供託金の支払不足の可能性があると指摘を受けていたことは、以前、本稿(「グレーLINE 関東財務局との攻防」)でも解説しました。これについて、先日、関東財務局が、「『宝箱の鍵』などのアイテムが前払式支払手段にあたり、供託金の支払の対象になる」という判断を下したという報道がありました。

 報道によると、このような認定がされたことにより、LINE社には、本年3月末時点で125億円の供託金の不足額が生じているということです。LINE社は、本当にこれら巨額の資金を実際に供託しなければならないのでしょうか。

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銀行との保全契約などにより
供託を回避することが可能

 実は、今回の判断によって、LINE社が125億円もの供託金を実際に支払わなければならないかというと、必ずしもそうではありません。別の方法で発行保証金を保全することができるからです。前回も解説した通り、前払式支払手段の発行会社は、その未使用残高が一定基準を超える場合に、一定額(具体的には、未使用残高の2分の1以上に相当する金額)を発行保証金として保全する必要があります。そして、この場合の保全の方法として、資金決済法は、3つの手段を予定しています。

 1.供託所への供託

 2.発行保証金保全契約の締結

 3.発行保証金信託契約の締結

 発行保証金の保全は、原則として供託の方法によって行われます。これは、発行保証金に相当する金銭や有価証券を、最寄りの供託所に供託するという方法です。供託による方法は、手続自体は単純ですが、供託した資産は事業や投資には使えません。前払式支払手段の発行規模が大きい場合、未使用残高も多額に上り、供託金も莫大な金額になりますので、発行会社の資金繰りに大きな影響を与えることになります。

 そこで、資金決済法では、発行保証金の保全方法として、銀行や保険会社との間で保全契約を締結する方法や、信託銀行・信託会社に信託する方法を認めています。このうち、保全契約の方法は、銀行や保険会社が手数料を受取り、発行会社の代わりに発行保証金を供託するというものです。前払式支払手段の発行会社は、銀行などに対する手数料を負担することになりますが、巨額の資金を自分自身で供託することはなくなりますので、資金繰りに対する影響を抑えることができます。

 また、信託の方法では、信託銀行・信託会社が、信託を受けた発行保証金を資産運用にあてることになります。発行会社としては、発行保証金について、資産運用による利益を得ることが期待できます。LINE社が125億円もの資金を供託所に供託し、全く使えなくしてしまうというのは、現実的ではないでしょう。おそらくは、銀行との間で保全契約を締結する方向で調整を図っているものと推測されます。


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