三菱自動車工業は、本年4月20日、国土交通省に提出した燃費試験データについて、不正な操作が行われていたことを公表しました。三菱自動車は過去2回、欠陥隠しの不祥事を起こしていることもあり、そのガバナンス体制には厳しい目が向けられています。
そのわずか3週間後の5月12日、日産自動車が、三菱自動車との間で資本業務提携の実現に向けた基本合意に至ったことを発表しました。それによると、日産が三菱自動車に対して2370億円を出資し、株式の議決権の34.0%にあたる株式を取得することが予定されているということです。
日産が、渦中にある三菱自動車との間の資本業務提携を、不祥事が公表されて間もない時期に発表したことは大きな驚きをもって迎えられています。今回予定されている資本業務提携とはどういったものでしょうか。そして、日産と三菱自動車の関係は今後どうなるのでしょうか。
日産が三菱自動車の大株主となる業務提携
日産と三菱自動車はライバル同士の関係にありますが、実はその一方で、以前から事業上の協力関係を拡大させつつありました。2011年には、両社が共同で出資して軽自動車の企画やプロジェクトマネジメントを行うジョイントベンチャー会社(株式会社NMKV)を立ち上げています。また、昨年の10月16日には、両社とNMKV社の三社共同で次期型軽自動車の企画・開発プロジェクトを取り進めることについて基本合意しています。
今回発表された資本業務提携は、そういった協力関係の延長線上にあるものですが、今までと異なり、日産が三菱自動車に出資して株主になることを内容とするものです。資本業務提携が実現した場合、三菱自動車としては日産からの出資金を事業の立て直しにあてることができます。同時に、日産としては三菱自動車の経営に対して、株主としての立場で関与することができるようになります。
特に、今回、日産は三菱自動車の株式について、議決権の34%を保有することが予定されています。これは日産が三菱自動車の株主総会において、特別決議を単独で否決できるということを意味します。特別決議を必要とする事項には、定款の変更や組織再編など、組織の根幹にかかわる重要な事項が含まれます。たとえば、今後、三菱自動車が定款変更のような重要事項を決めようとした場合、たとえ他の株主の全員が同意をしたとしても、議決権の34%を保有する日産は単独でこれを拒絶できることになります。
今回の資本業務提携が実現した場合、結果として日産は、三菱自動車の経営に対して強い影響力を持つことになります。
なぜ日産が、不祥事の渦中にある三菱自動車に対して巨額の出資金を提供し、大株主となることを決断したのかについては、軽自動車の開発をさらに強化することや、三菱自動車が得意とする東南アジアでの販売を強化することなどが推測されています。