官民ファンドで日本企業の再編・統合を推進する役割の産業革新機構の志賀俊之会長兼CEOは、19日に日本記者クラブで講演し、「日本の産業はプレーヤーの数が多すぎて過当競争を起こしている。その結果、日本の企業のROE(自己資本利益率)が欧米に比べて低い。グローバルな競争に勝って行くためには、企業の外から新しい技術を持ってくるオープンイノベーションが必要だ。(技術開発が)自前主義の日本企業は、このままでは地盤沈下してしまう。外から新しい技術を導入して、新陳代謝を図らなければならない。具体的には企業再編、ベンチャー企業の活用、M&Aにより日本にはない海外の経営資源の活用などが求められる」と述べた。
健康体のうちに決断を
産業革新機構は官民ファンド(約2兆円)を活用して成長性、革新性のある産業の再編・統合を促進するために09年に創設された。15年間の時限立法に基づいており、2024年で役目が終わる。これまでの投資実績は96社で、そのうち75社がベンチャーへの投資。過去の例では、ソニーモバイルディスプレイ、東芝ディスプレイ、日立ディスプレイズの3社のディスプレイ事業を統合して産業革新機構が2000億円出資して11年に設立したジャパンディスプレイや、三菱電機、日立製作所、NECの半導体部門が統合して産業革新機構が筆頭株主になって11年に設立したルネサスエレクトロニクスなどがある。
日産自動車の再建を指揮した経験がある志賀会長は「日本企業は業績に余裕のある健康体な時こそ、統合を進めるべきだ」と強調する。「不採算だが創業以来の事業だからやめられない、統合すると従業員を切らなければならないからできないなど、日本の経営者に取って事業統合はハードルが高いのは十分理解できる。しかし、『経営者の心の岩盤』を打破してでもやる必要がある」と訴える。
業界の再編・統合というと、いまでも経済産業省が主導して過剰な精製設備を抱える石油化学業界などの行政指導が行われているが、産業革新機構が求められているのは、大企業より小粒の成長力のある事業について、資金を出して効率化を進めようというもの。「口も出すが資金も提供する」というファンドで、日本がこれまで得意としてきたモノづくりの発展につながるような分野への投資が多い。