2024年12月12日(木)

WEDGE REPORT

2016年1月21日

 中国の家電メーカー、ハイアールと米ジェネラル・エレクトリック(GE)が、GEの家電部門を54億ドルでハイアールに売却することで合意した。ハイアールはシェアにおいて世界一の家電メーカーだが、米国でのプレゼンスは低い。主に一人用の低価格ポータブル洗濯機、小型冷蔵庫などがネット販売されているのみだ。今回の買収は、ハイアールの米国でのシェア拡大と「プレミアム」ブランドへの変身を目論んだものとみられる。

名門GEを買収したハイアール(iStock)

 ハイアールは世界21カ所にインダストリアル・パークを展開する大企業で、2014年の総売上額は326億ドルに上る。今回の買収は米国では2016年に入り最大のもので、過去の中国企業による米企業買収を合わせても3番目という大規模なもの。また、家電業界では2008年のパナソニックによる三洋電機買収(71億ドル)に次ぐ規模となる。

 一方のGEアプライアンスは100年以上の伝統を持ち従業員1万2000人の家電メーカーではあるが、このところはサムスン、LGなどの韓国系企業に押され気味。2014年の総売上額は59億ドルだ。

GEは「お荷物」を高く売却

 GEにとってはハイアールへの売却により、巨大な中国市場へのアクセスが可能になる。またハイアールは米国内でGEブランドで自社製品を販売することになり、これまでの「安い小型家電」のイメージから総合的な家電メーカーへと成長できる。さらにGEの買収にはGEが株式の48.4%を所有するメキシコの家電メーカー、Mabeも含まれており、中南米での市場拡大も期待できる。

 GEのCEOジェフ・インメルト氏は売却発表の声明の中で「ハイアールは米国市場での成長にフォーカスを当てており、米国内に生産拠点を建設することに意欲を持っている。米産業への投資も視野に入れ、米国にとっては雇用環境上も有利な売却と信ずる」と述べた。

 GEは「お荷物」だった家電部門を思ったよりも高く売却できた。同社は以前から家電部門の切り離しを画策しており、スウェーデンのエレクトロラックス社と33億ドルでの譲渡話が出ていた。これは昨年12月にご破算となったが、その陰でGEはより高い価格での買い手をしっかりと確保していたことになる。

 今後GEはジェットエンジン、医療用機械、クリーンエネルギーなどの重工業部門に注力する。またハイアールとは家電売却のみならず、インターネット、ヘルスケア、先進産業用ロボットなどの分野で戦略的パートナーシップを組む。つまり、両社はIoTや自動車産業と提携したスマートホームなどを推進していく構えだ。GEはすでに本社をマサチューセッツ州ボストンに移転すると発表。世界的に有名なMIT、ハーバードなどと研究部門での提携も視野に入れている。


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