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2016年2月23日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

日本の自動車業界も例外ではない

 自動車業界で見ると、国別では日本のシェアは29%で断トツ、米国とドイツはそれぞれ16%で、日本はまだ競争力を維持できている。しかし、日本には完成車メーカーが8社もあり、部品会社に至っては年商数千億円の中堅・中小企業が数え切れないほどある。

 志賀会長は「これまでは自動車メーカーの生産現場、部品メーカー、研究開発が一体となって努力した『現場力』があったからやってこられた。しかし、これからは電気や水素で車が動き、自動運転が登場してハンドルから手を離しても運転できる時代になろうとし、インターネットが常時、車と接続して車を販売するビジネスモデルも変わってきている」と時代の大きな変化を指摘する。

 モルガンスタンレーの予測によると、いまの車はエンジン、トランスミッションなどがあってハードが90%、ソフトは10%の割合だが、20年にはハード部門はモーター、バッテリーなど電動系だけになり、その上にソフトが乗るようになる。そうなると、ハードの比率は40%、ソフトが60%とソフトの比率がハードを上回るとみている。ライバルは、テスラになり、グーグルが自動運転の車の試験をはじめ、アップルが極秘の自動運転車プロジェクトをやるなど、ITの大手が進出してきている。

 ドイツの老舗のタイヤメーカー、コンチネンタルという会社は、いち早く自動制御技術の開発を手掛け、シーメンスの自動車電子部品部門などを買収するなどして、特に足回りの自動運転技術を進めてきた。「100回ものM&Aを繰り返して、いまではコンチネンタルの技術なくしては自動運転の車はできないほどに成長した」(志賀会長)という。

 日本ではトヨタ自動車が1200億円投資して人工知能(AI)の会社を作ると発表するなど、IT分野との連携が目立ってきている。グーグル、アップルは企業買収を繰り返して電光石火でモノづくりの会社を取り込むオープンイノベーションを行ってきている。

 志賀会長は「いまの段階ではこうしたIT企業が競争力ある自動運転ができる車を作れるとは思えないが、ソフトメーカーはハードのことを勉強しており、日本の自動車メーカーが将来とも勝ち続けることができるかどうか大きな危機感がある」と自動車業界の先行き心配する。

 一方で、日本メーカーの大半が依然として技術は自前主義のままだ。モノづくりで生き残りを目指す日本企業としては自前主義にこだわっていては「ゆでガエル」になってしまい、気付いた時には世界の趨勢から完全に取り残されてしまう恐れがある。


  
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