今回のテーマは「ティラーソンの心境」です。ロイター通信及びグローバル世論調査会社イプソスが行った共同世論調査(12月1-5日実施)によれば、「トランプ政権内で、誰が次に辞職ないし解任されると思いますか」という質問に対して、22%がレックス・ティラーソン国務長官、14%がジェフ・セッションズ司法長官と回答しました。続いて、ケリーアン・コンウェイ大統領顧問とサーラ・ハッカビー・サンダース報道官がそれぞれ7%となっています。米国民は、ティラーソン国務長官が次に辞職ないし解雇されると考えているのです。
本稿では、まず12月15日に開催された国連安全保障理事会における閣僚級会合で、利害関係国が北朝鮮問題に対して、どのような対処法を主張したのかを分析します。次に、ティラーソン国務長官の最近の発言を分析し、そのうえで同長官の心境を探ってみます。
コンフリクトの対処法
コンフリクト(対立)が生じた場合、マネジャーやネゴシエーターはどのような対処法をとるのでしょうか。コンフリクトの研究で有名なトーマスとキルマンの5つの対処法のモデルを紹介したうえで、北朝鮮問題に応用してみましょう(図表)。
彼らによれば、対処法の第1は「回避」です。回避型のマネジャーやネゴシエーターは、対立している相手に関心を示さず、距離をあけて、関係改善を図ろうとしない特徴があります。
第2は「調和」です。調和型は、波風を立てるのを嫌い、コンフリクトを抑制するために自分の利益を犠牲にして、相手に同意する傾向があります。
第3は「競争」です。競争は、調和と対照的な対処法です。自分の意思を相手に押し付け、彼らがどのように感じるかは関心がなく、あくまでも私欲と目標の達成を優先します。
第4は「妥協」です。妥協型は、当事者全員にとって現実的で、しかも受け入れられる解決策を探ります。
第5は「協働」です。協働型は、当事者同士が協働して問題解決に当たり、自己と相手の双方の利益、欲求及び目標を尊重する傾向があります。
以下で、このモデルを使って、閣僚級会合における主要な利害関係国の対処法を説明します。
利害関係国にみる対処法の相違
国連安全保障理事会の閣僚級会合で、ティラーソン米国務長官は、「対話を始める前に、北朝鮮は脅迫行為を停止しなければならない」と述べて、対話を開始する前提条件を突きつけました。さらに、閣僚級会合後、記者団に対して対話のチャネルは残されているとしながらも、米韓合同軍事演習の凍結、米国の独自制裁緩和及び人道支援を、対話の前提条件として受け入れないことを明らかにしました。