それ以来、2匹の犬がスターになり、アイコンになる。ちょっと入り口に行列できてたりしたらタロ、ジロ歩かせたりね。
汗流して不満たらたらながらも待っててくれてるお客さんのところにタロジロを連れてくと、それだけで大喜びしてくれるんですね。これがパブリシティの産物なんだ、という強烈な経験ですね。
浜野 もし今だったら写真撮ってブログに載せて。
亀山 そうです。もっと一気に爆発的盛り上がりになってたかもしれませんよね。
ともかくあの体験が、いまでも自分の映画づくり、パブリシティのやり方に生きていると思います。
だいたい、映画って、僕もそうだったけど、仁侠映画を見て暗い映画館から娑婆へ出てきたら、なんか数時間、肩で風切って歩いて、広島弁でしゃべる自分がいたりするものでしょ。
もともとそんな力をもってるものが、ひとつの現象といえるくらいになったら、それは大きな影響力をもつことを、僕はひょっとしたら入社すぐに知らされたかもしれない。タロ、ジロで。
映画作品は監督のもの。でもそこに社会現象までできたとしたら、それはプロデューサーの総合力、かな。少なくとも、そこがプロデューサー冥利につきるところ、ですね。
(構成・谷口智彦)
亀山 千広(かめやま・ちひろ)
フジテレビ取締役、映画事業局長。
1956年、静岡県生まれ。80年にフジテレビ入社後、ドラマのプロデュサーとして、「あすなろ白書」「ロングバケーション」「踊る大捜査線」などを手が ける。99年、04年には、「踊る大捜査線 THE MOVIE」「踊る大捜査線 THE MOVIE2」で第18回、第23回藤本賞を受賞。10年7月から公開された第3弾「踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!」も大ヒットを記録した。
12月11日から公開された「ノルウェイの森」は、松山ケンイチ、菊池凛子、水原希子らが出演。世界50カ国・地域での放映が予定されており、高い期待が 寄せられている。