前原外相は今週ワシントンを訪問中で、議会や政権、その他のワシントン関係者に対し、なぜ日本が言うこと、やること、成し遂げようとしていることが、日米同盟という文脈に限らず、アジアの安定と繁栄を保つうえで決定的に重要なのかを思い出させた。
CSISで行った極めて包括的なスピーチの中で、特に我々の印象に残ったのは、前原外相が経済と貿易に関する進歩的な目標を菅政権の目標としてはっきり明示し、東南アジア諸国連合(ASEAN)やアジア太平洋経済協力(APEC)、FTAAPについて論じたことだ。
外相は環太平洋経済連携協定(TPP)への参加方針を初夏に決断するという政府の約束を改めて表明したうえ、農林水産省と、ますます高齢化して驚くほど小さくなった農業団体との「取り決め」の大枠まで示唆した。古い言い回しに従えば、神がこれを聞き入れてくれることを望むばかりだ。
言うまでもなく、前原外相は即座に、再開される6カ国協議で北朝鮮と対話する日本政府の意思を繰り返しながら、北朝鮮(ひいては中国)に対する米韓両国の対応を支持する政府の意思を強調したことでニュースの見出しを飾った。ただし、6カ国協議の再開は、北朝鮮側が南北の関係修復に真剣に取り組み始め、大量破壊兵器の実験をはじめとする軍事的な挑発行為をやめることが条件だ。
中国に関して、明確
また、前原外相は、尖閣問題だけでなく、日本のすべての近隣諸国・貿易相手国にとっての懸念事項である中国関連の紛争について、菅内閣がどれほど絶対的かつ首尾一貫して中国に断固たる態度を取らねばならないか理解していることを、誰の目にもはっきりさせた。
普天間問題は避けられない。前原外相は5月28日という日米合意の期日は守ると約束し、米国の聴衆に向かって、過去1年間の様々な困難にもかかわらず、菅政権がホストネーション・サポート(いわゆる思いやり予算)を全額計上したことを指摘した。
「歴史の問題」については、前原外相は率直に、その大半が第2次世界大戦後生まれで、日米戦略同盟を堅持するために積極的に努力することが「我々の責務」だと考えるのではなく、日米同盟の存在と恩恵を「所与のもの」と考えがちな日米両国民に警鐘を鳴らした。
サミュエルズ・インターナショナルの西本恵子副社長(鉄道関連の仕事をしてきた)にとって喜ばしいことに、前原外相は国土交通相としてリニアモーターカー分野での協力と合弁事業を強力に支持していた。
米側、沖縄で態度軟化
というわけで、前原外相は政府のためにある程度の「時間稼ぎ」をした。我々の情報源によれば、数カ月間にわたって自民党時代の「普天間合意」を一字一句厳密に守れという「強硬路線」の主張が続いた末に、米国はようやく沖縄県知事選の暗黙の教訓を学んだようだ。
以前は極度の強硬派だった国防総省筋との最近の会話が示唆しているのは、米国は今、日本政府が沖縄県民との妥協を模索する手助けをしなければならないことを認識しているということだ。最近、読者の皆さんが日本のメディアで、米国が各種部隊を別の場所に分散させることについて協議する用意があるという記事を読むことになったのは、このためだ。