2024年7月18日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年1月26日

 中国の胡錦濤・国家主席の訪米に同行していた中国企業は、わずか2日間で1150万トン、総額67億ドルの米国産大豆を買い付けた。米国産大豆の1度の買い付け額としては過去最大規模。市場関係者は驚きの声を上げているという。今回購入した大豆は来年輸入される予定で、中国の全輸入需要の2~3カ月分に相当する。中国は昨年5480万トンの米国産大豆を輸入。「今回の大量買い付けで今年通年の輸入額が増えるとは限らないが、週明けの大豆相場を押し上げる要因になる可能性はある」と伝えるメディアもある。

 ここで、われわれ日本人があらためて見つめるべきなのは、中国は今年、米国産農産物の輸入でメキシコを抜いて世界2位となる見通しの「食糧輸入大国」だという事実である。ちなみに1位はカナダ、3位はメキシコ、日本はその後だ。

 対米輸出で儲けた金で米国産の食糧を買う。今回の胡錦濤訪米ショーを、日本のマスメディアは「米国の経済面での中国依存がいっそう鮮明になった」とばかり伝えたが、見方を変えれば、中国はもはや、二重の意味で米国に食わせてもらう国になったといえる。

 十数億の爆食胃袋を抱える独裁国家の指導者らは、今後さらに激しく、世界中の食糧と食糧生産の場となる豊かな土地を買い漁りに走るであろう。その動きが、世界の穀物相場や世界中の不動産価格に影響を与え、混乱をもたらすことは間違いない。

 一方で、対中けん制をチラつかせながら、環太平洋経済連携協定(TPP)によって日本の農産物市場をさらにこじ開けようとする米国の思惑にもシビアな目を向けるべきである。今日の東アジアで、中国が厄介な存在であることは論をまたないが、その「悪役」の存在あればこそ、米国の一部産業界が商売をやり易くなっている。これもまた確かなことなのである。


本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜

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