前向きに読み解く経済の裏側

2018年3月5日

»著者プロフィール

過去に円高だと株価が下がったから今回も、という連想

 過去の円高局面では、株価が下がることが多かったので、人々は「円高になったから、今回も株価は下がるだろう。急いで売ろう」と考えます。そうなると、実際に株価が下がります。そうなると、ますます「円高だから株を売ろう」と考える人が増える、というわけです。

 高度成長期以来、「日本経済は円高に弱い」と言われ続けて来たので、そのイメージが今でも強く残っていて、「円高なら株売り」という連想になっている投資家も多いのでしょうね。

 株価は美人投票ですから、「円高だからといって株価が下がるという理論的な根拠は乏しいから、自分は円高でも株は売らない」などと言っていては儲かりません。他の投資家がやりそうな事を予見して、他の投資家より一瞬でも早く取引することが必要なのです。

海外投資家のポートフォリオで日本株のウエイトが肥大化するから売る

 筆者は海外投資家の動向には詳しくありませんが、可能性としては「円高で、日本株の資産価値をドル建てに換算した値が膨れ上がった。今や我が社の株式資産全体のなかで日本株の比率が非常に高くなっている。資産全体に占める日本株の比率が高すぎるのは問題だから、日本株を売ろう」といった動きも考えられます。

 もしかすると、世界各国の株に投資している日本人投資家も、「円高で、海外の株価が円換算で値下がりしてしまった。日本株を売って海外の株を買わないと、株式資産全体に占める海外株の比率が少なすぎてしまう」と考えるかもしれません。そうなれば、日本株の売り注文が出てくるかもしれません。

因果関係的にはリスクオフが親で株安と円高が子という場合も

 本稿では「円高になると日本株が売られる」というメカニズムを考えて来ましたが、「円高になったから日本株が売られた」ように見えるけれども、じつは因果関係が違う、という場合もあるので、注意が必要です。以下では内外の投資家の行動について考えてみましょう。

 輸出企業がドルを持ち帰って銀行に売りに行く時、買うのは日本人投資家です。「ドルを買って米国債や米株に投資しよう。ドル安円高になるリスクはあるが、賭けてみたい」と考えてドルを買うのです。こうしたドル買い注文は、人々が賭けをしてみたい気分の時(リスクオンと呼びます)に増えますが、人々が賭けを避けてジッとしていたい時(リスクオフと呼びます)には減ります。

 リーマン・ショックのような時には、人々は「何が起きるかわからないから、とりあえず投資ポジションを閉じて、何が起きても構わないようにしよう」と考えます。極端なリスクオフとなりますから、投資家たちは「今まで買っていたドル建て資産を売却し、ドルを売って円預金に戻そう」と考えます。これによってドルが安くなります。同時に、日本株も売って預金に戻すので、ドルも日本株も安くなります。

 リーマン・ショックのような場合には、日本人が巨額のドル資産を売ってドルを売る一方で、外国人投資家が円資産を売って円を売りますが、日本が巨額の対外純資産を持っているため、差し引きするとドル売り注文の方が多くなるのです。

 因果関係としてはリーマン・ショック等が親で、ドル安円高と日本株安が兄弟となり、兄弟だから似た動きをする、というわけですね。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る