2024年12月22日(日)

中国メディアは何を報じているか

2018年3月16日

 中国で国家主席の任期の制限を撤廃する憲法改正案が可決された。共産党にとって敏感すぎるこの話題を各メディアがどう扱ったか紹介するとともに、そもそも中国メディア、あるいは中国系メディアにどういうものがあるのか整理したい。

(写真:ロイター/アフロ)

大陸メディアは基本転載で独自色ゼロ

 全国人民代表大会で国家主席の任期を2期10年に制限する規定を撤廃する憲法改正案が11日、採択された。2004年以来、14年ぶりの憲法改正だった。改憲の珍しくないお国柄のため、日本の憲法改正ほど重みのある行為ではない。とはいっても、改正が長期政権の樹立を可能にする大きな転換点であるのは間違いない。反対票がわずか2票というのは、歴代の改憲で最も少ないとされる。

 中国メディアの報道は、当然ながら賞賛一色になる。だいたいは国営通信社の新華社の報道の引用、あるいは人民日報の引用だ。独自の内容があるとすれば、そのメディアのカバーする地域の代表委員が改正を熱心に議論しているとか、熱烈に歓迎していると伝える程度だ。

 たとえば、「南方週末」といったかつて骨太の独自報道で知られたメディアを運営しているメディアグループのニュースサイト「南方網」を見ても、独自の記事は「広東の代表団は憲法の修正案を熱心に議論している。憲法意識を強化し、憲法の実施を推し進める」という内容になってしまう(http://news.southcn.com/gd/content/2018-03/14/content_181088533.htm)。

 2013年に南方週末の新年記事が事前検閲で大幅に書き換えられたことが明るみに出て社会問題化した「南方週末事件」を記憶している人も多いのではないか。当時は硬骨漢の記者が多く、調査報道が多かったのだけれども、今ではすっかり骨抜きの感がある。そもそも南方網を運営するメディアグループが広東省の共産党委員会の管理下にあることを考えると当然の結果とはいえる。同じメディアグループが北京に作った都市報の「新京報」も独自報道で知られるが、改憲に関して独自の内容はない。

 中国のメディアはそもそも共産党の指導下にあって、「党の舌」としての役割を果たすものだ。ただ、市場経済導入後に財務上の独立した経営を求められ、党機関紙のような無味乾燥で誰も読まない新聞だけでは経営が成り立たなくなった。そのため、都市住民を対象読者とする都市報や、娯楽ニュースの多い晩報(夕刊)が90年代に創刊された。特に都市報では調査報道による不正の告発も行われるようになっていた。ただ、現政権になって規制が強まっている。

 党の統制強化につなげる目的で、多くのメディアグループではセントラルキッチン方式が取られているという。これは、メディアグループ内で機関紙、都市報、ネットニュースなど複数のメディアの取材と編集を一体的に行い、どこでどのようにニュースを配信するか、一括して決めるというもの。この影響もあって、中国メディアで面白い報道というのはだんだん減ってきている。


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