2024年12月9日(月)

オモロイ社長、オモロイ会社

2018年5月12日

 外務省のホームページを見てみると、日本が承認している国数は195カ国とあります。そこに日本自身を追加して、196カ国。また国連加盟国数は193カ国と記載があります。

 今年の5月1日現在、209カ国(ccTLD調べ:country code Top Level Domain、国名コードに基づくトップレベルドメイン)の日本に在留している外国人3万人超の人々が登録・活用しているデータベースを保有している会社があります。大阪で起業、現在は大阪・東京の2拠点で事業を展開するYOLO JAPAN(旧社名:株式会社aim)の加地太祐社長に話を聞きました。

(lankogal/iStock)

外国人を顧客とみなす発想〜ビジネスモデルについて

 「私たちは、外国人の皆さんを顧客と見なしているんです」と、加地さんは開口一番話します。昨今の報道・ニュースを見ていると、「外国人技能実習生の疾走・脱走、行方不明」や「外国人不正労働、企業側の賃金不払い」などという、活字が出ない日はないのでは? と思うほど全国各地で多発している現状に加地さんは怒りをぶつけます。

 「日本は良い国、美しい四季ある、歴史ある国として、期待を胸に日本を目指す外国人の皆さんに申し訳ないと感じます。我々は素晴らしい国、日本を目指す外国人の皆さんに安心して、喜んで、そして楽しんでもらえる環境提供を目指すことを一義としています」と、話します。

 同社の事業について下記にまとめてみます。

1、外国人が喜んで集まるモニター事業(市場調査事業)

 海外展開や外国人向けの商材開発で日本人が自分たちの「勝手な仮説」で「これは売れるだろう」と思って製品化・商品化して大失敗するということがあります。そこで外国人に直接、ヒアリングや体感をしてもらって、意見を出してもらいます。

 大手電機メーカーから、コスト高となっていた現地国での市場調査を、日本国内でできないか? と相談があったところから事業化がスタートしました。

 ひげ剃りモニターで「髭の濃いインド人を10人を集めて欲しい」と、注文されても、周囲には集められる会社がないことに気付いた、と加地さんは言います。そこで、モニター事業を外国人の皆さんに喜んでもらえる体験の場として提供することを考えました。

 ここ最近のモニターには、

  • ビールの試飲モニター、150分飲み放題で1.3万円の収入
  • 電機メーカーの鼻毛カッターモニター、30分8000円
  • 中東の人向けヒゲトリマー体験30分7000円
  • 国籍不問スマホでのオンラインアンケート、5分1000円

 などなど、さまざまなモニター募集が企業側からの依頼がきています。外国人の皆さんからしても日本製品や日本のサービスを体験できる機会となっていて、人気のモニターだと数倍〜数十倍の倍率になっているそうです。

2、外国人が見つける優秀な外国人

 「日本と世界が繋がる、外国人のための情報メディア」と位置づけて『YOLO  JAPAN』と名付けて、2016年4月にサービスを開始。現在登録者は、3万人を超えてきています。人気の理由は「登録外国人のその人脈を活用する」という発想でした。

 登録者を単純に仕事紹介するだけでなく、登録者に「あなたの知り合いにこの仕事にぴったりな人はいませんか」と、SNSを活用して投げかけます。もし該当者がいれば、紹介者も『YOLO  JAPAN』に登録して、採用となれば紹介者にもリファレンス料謝礼が発生します。

 紹介ルートであれば、変な人は紹介しない、自分も普段『YOLO  JAPAN』に世話になっている、モニター事業が楽しいと思っている人々からの紹介なので「良い人」が紹介される循環となっているそうです。

 また、採用が決まった人々の採用側の評価も簡単に登録できるようになっており、「仕事ぶり」「日本語能力」など見える化することで、次の採用の場面でも履歴が追えるようにしています。

 国内での採用に限定しているものでなく、海外での採用にも使われているそうです。例えば、タイでホテル事業を展開している日本企業が現地で日本語が話せるタイ人の採用に困っているところ、『YOLO  JAPAN』に相談、日本国内にいるタイ人から現地の日本に過去在留していた友人に連絡、面接、採用に至ったそうです。

 日本での外国人雇用だけでなく海外での採用にもアプローチできる状況になってきています。今後は、日本から母国に帰国する外国人に母国での就労斡旋も積極的に行っていくと加地さんは話します。日本で就労経験がある外国人を母国で展開する日本企業に紹介することで教育・研修コストも圧縮できるそこにビジネスチャンスがあるとにらんでます。

焼肉屋でのバイトから1部上場の製薬メーカー研究職へ

 日本人であろうと、外国人であろうと「アルバイト経験は社会で活躍するための教育プログラムとして大切なもの」と、加地さんは話します。

 例えば、ある国立大学に留学していた学生が『YOLO JAPAN』を通じて焼肉店でアルバイトしていました。あるとき、1部上場企業の製薬メーカーの研究職の採用打診が加地さんの元に舞い込んできました。そのとき、焼肉店でアルバイトをしているこの学生が、理系でかつ製薬関係の研究をしていることがわかりました。本人もその気になって、応募した結果、見事採用となったそうです。

 加地さん自身も学生時代に経験したアルバイトが社会へ出るときに役立ったと話します。外国人留学生にいろんなアルバイトを経験してもらうことで日本のサービスレベル(おもてなし)の勉強に役立つと考えています。

 そこで、外国人や外国人留学生を人手不足に困っている企業に紹介したい。しかし、現状では経費をかけてアルバイトの採用の記事媒体に出稿しても面接に来てもらえないという状況にあります。そのため、面接に来るだけでも外国人に報酬を与える仕組みを作りました。これを「アルバイト確約面接」として事業化しています。

 加地さんによれば、登録者のうち留学生割合は2割程度になっているそうです。また法規制である「週28時間」を超える労働は不法労働になりますので、アルバイト先や本人への面談時に予防策(外国人採用のハローワークへの報告・提出、ダブルワークなどへの注意、複数の仕事へ同時エントリーできない仕組み)を講じています。

 このルールをキチンと守りながらも留学生の権利として日本でのアルバイトが日本語、日本の習慣慣習を効率よく学べ、育成できるエコシステムとしてとらえています。

 外国人を採用する企業があっての事業モデルですが、まずは外国人に喜んでもらえることを主眼としてどの事業も行うことと、ITを活用することで、他に類をみないスピードで登録数を伸ばしている『YOLO  JAPAN』ですが、あと2年後には20万人を目指しているそうです。その先には、国内外の観光ガイド事業、外国人に拠る外国人集客、国内での空き家活用等の住宅関連事業、外国人に拠る海外展開支援と夢は広がります。


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