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イノベーションの風を読む

2018年4月23日

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生き残りの最後のチャンス

 アルビン・トフラーは1980年に出版した『The Third Wave』で、農業革命後の第一の波と産業革命後の第二の波に続いて起こる、情報革命という第三の波を予言した。AOLの元CEOで共同創業者のスティーブ・ケースは、同名の著書(日本語版は『サードウェーブ』)のなかで、トフラーの予言どおりに起きている現在の情報革命を、さらに三つの段階(波)に分類している。

 人々をインターネットにつなげ、人と人とをつなげるインフラと土台を築いた第一の波を経て、すべての消費者がスマートフォンを持ち、Eコマースやソーシャルネットを利用する現在は第二の波の段階だ。すでに、経済はソフトウェアに呑み込まれつつある。

 第二の波に乗ったアマゾンやフェイスブックやグーグルは、あらゆる産業を横断的にネットワーク化した、水平型のハブ構造のビジネスモデルで大きく成長した。「サービス型ソフトウェアのどの製品も事実上、無限に拡張できる。新規ユーザーへの対応は、たいていの場合、サーバーを追加したりエンジニアを増やすのと同じくらい簡単だ。また、アプリは無限に複製することができる。要は、新たに製品を製造する必要がない(サードウェーブ)」

 あらゆるモノのインターネット(IoTではなくIoE)の第三の波では、あらゆる産業がソフトウェア化し、物理的なビジネスと電子的なビジネスの境界が曖昧になるという。産業ごとの、ターゲットを絞った垂直統合型の、新しいビジネスモデルの開発が見込まれる。

 トヨタのモビリティサービスプラットフォーム構想は、第三の波を見据えた垂直統合型のビジネスモデルと言える。モビリティサービスはハードウェアが必須な産業分野でもあり、ハードウェアを売るビジネスは衰退しても、ソフトウェアの価値を顧客が享受するためのハードウェアが不要になることはない。自社のハードウェア製品を、ソフトウェアからの視点で再定義してソフトウェアと統合する。ここに、日本メーカーが生き残りをはかる最後のチャンスがある。

 ウーバー(と、そのコピーキャットたち)は、ライドシェアという新しいビジネスモデルで急速に成長しているが、彼らが、次の新しいモビリティサービスのためのハードウェアを開発して製造することは考えにくい。不可能ではないだろうが、「無限に拡張できるサービス型ソフトウェアの製品」のビジネスと、ハードウェア製品のビジネスは大きく異なる。第二の波に乗ったスタートアップたちは、その違いを最大限に活かして成長した。

 垂直統合型のビジネスモデルでは、シリコンバレーと他のいくつかのスタートアップのエコシステムがほぼ独占してきたインターネット関連のソフトウェア技術だけでなく、産業ごとのグローバルな専門知識が重要になる。これはメーカーに限った話ではないが、特に日本メーカーは、自動車や家電やオーディオやカメラなどの特定の産業において、グローバルにビジネスを展開し、その産業の専門知識を蓄積してきた。

 第三の波に乗るためには、その産業に精通した大企業と、革新的なソフトウェアのアイデアを持ったスタートアップとの協働が欠かせない。大企業は、自らのビジネスの変革のビジョンを持ち、既存の産業分野でのライバルに先んじて、有望なスタートアップとの協力関係を築く必要がある。

 「主要企業は、第三の波を自社への脅威であると同時に絶好の機会とみなすべきだ。すぐれた企業幹部は、この波に迅速に乗じ、社内のサイロ化したシステムを解体して部門間の連携を促進し、業界の枠にとらわれずにパートナーシップを模索するだろう。そうすれば、栄華を誇ったライバル企業が、第三の波に乗った起業家たちになぎ倒されていくさまを見渡す位置につけるはずだ(サードウェーブ)」

  
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