ソフトウェアへの戦略的投資
トヨタは2016年からウーバーに出資し、ライドシェア領域での協業の検討を進めてきており、ウーバーはMSPFにも参加している。また、ゲットアラウンド(カーシェア)、マース・グローバル(マルチモビリティサービス)、グラブ(配車サービス)などの海外のスタートアップにも投資を行っている。
これらは、いずれも財務的なリターンを目的とした投資ではないだろう。自らのビジネスを変革しなければ生き残ることができないという危機感からの、変革のビジョンの実現のために必要だと考えるソフトウェアへの戦略的な投資だ。
4月3日(米国時間)に、音楽配信サービスのスポティファイが、ニューヨーク証券取引所に上場した。そして、ソニーは保有する株式の一部の17.2%を売却したと発表した。3日の終値ベースで、売却によって約1050億円の利益を得たと報道されている。
通常の新規株式公開(IPO)の手続きを経ない異例の直接上場だったため、ロックアップ期間(公開前の大株主が、上場後に保有株の売却を制限される期間)が設定されておらず、上場と同時の売却が可能だった。ベンチャーキャピタルとしてならば成功だろうが、ソニーのスポティファイへの投資は、財務的リターンだけを目的としたものだったのか。
2015年にソニー(子会社)は、それまで19カ国で提供してきた自前の音楽配信サービス、Music Unlimitedを終了し、スポティファイと提携すると発表した。iPod以来、音楽視聴のハードウェアビジネスにおける、宿命のライバルとなったアップルがApple Musicを開始するタイミングでもあったので、グローバルにサービスを展開するスポティファイと提携して、ウォークマンの再定義(ソフトウェアにイヤホンをつけること)に取り組むのではないかと期待したのだが。
ソニーは中長期の持続的成長戦略のひとつに、「顧客に継続して課金し、安定的に収益を拡大していくリカーリング型ビジネスモデルの強化」をあげている。それには、ソニーのハードウェア製品に関連する分野で革新的なサービスを提供する、スポティファイのようなスタートアップとの緊密な連携を模索する必要があるだろう。