2023年2月6日(月)

解体 ロシア外交

2011年5月27日

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 それにもかかわらず、「リセット」のプロセスにおいて、米国がポーランドとチェコへのMDシステムの配備計画を取りやめる約束をしたのを忘れたかのように、可動式のより低レベルのMDシステムをポーランドとルーマニアに配備する計画を進めていることに、ロシアの米国に対する不信感は募るばかりだ。また既述のようにウィキリークスで明らかになった情報などによってNATOに対する不信感も強まっている。一方、欧州MD計画の議論はロシアが望む「対等」の方向では進んでおらず、欧州MDが2015年以降、ロシアの核戦力を弱める恐れがあるとされているなかで、ロシアとしては米国やNATOと単純に協調路線は歩めない状況だ。だからこそ、ロシア側はMD問題で「対等」な協力が拒否されるのであれば、軍拡競争が再来すると警告しているのである。

 ロシアは使用予定のない数百基の地対空核ミサイルを保持しており、かつ近距離核兵器の多くは、テロ対策などが中心となっている冷戦後の現在ではほとんど意味を持たなくなっているが、それでも軍改革が進められているとはいえ、国内の通常兵器の老朽化に悩むロシアとしては、世界大国としてのステイタスを守るためにも核兵器をより多く所持していることに重要な意義を感じている。

 そもそもロシアはオバマが推進する「核なき世界」構想には懐疑的であった。オバマ大統領は、最終的には戦略核のみならず、戦術核、及び未配備の核弾頭も削減の対象とする新たな条約交渉をロシアと行いたいようであるが、新STARTすら危機にある現在において、それは極めて難しいだろう。

 第二の理由としては、ロシアの内政問題が考えられる。2013年の大統領選挙を前にして、メドヴェージェフ大統領が欧米に対して毅然とした態度をとれる「大国の大統領」にふさわしい強い指導者をアピールしたかったこともあるはずだ。しかも、「新START」破棄をちらつかせた内外向け記者会見でも大統領選挙について言及していたのである。2013年の大統領選挙をめぐっては様々な憶測が流れているが、大統領の三選を禁止する条項の故、プーチン首相の「中継ぎ」として大統領に就任したと見られていたメドヴェージェフ大統領が自らの再選を目指すようになり、両者間の激しい攻防が行われているとも伝えられているからだ。

対抗姿勢を強めるロシア

 そして、ロシアは近く、アゼルバイジャンのガバラ・レーダー基地の貸与期限延長について交渉を始めるという。アゼルバイジャンは賃貸料の値上げと、基地による環境破壊を緩和する追加措置を要請するとともに、基地の共同運営を提案する予定だという。共同運営となった場合は、同基地で得られた情報をアゼルバイジャンの許可なく第3国に提供することを禁じる条件を付与するとも言われている。

 同基地は、南方からのミサイル攻撃に対処するためにソ連時代の1985年にアゼルバイジャン北部に建設された。「ダリヤル」型早期警戒システムの中で、今でも最も強力な性能を持っており、2001年の911事件後に米軍がアフガニスタンを攻撃した際も、同基地が真っ先にそれを確認したため、ロシアは同基地の重要性を再確認したという。アゼルバイジャンは、外国軍の駐留を認めていないこともあり、ソ連解体後しばらく、同基地はロシアとアゼルバイジャンの間で問題になったが、2002年に両国は10年間の貸与に関する協定で合意した。同基地を軍事施設とした場合、アゼルバイジャンの法に触れるため、その協定では、同基地は「情報分析センター」として、所有権はアゼルバイジャンにあるが(ただし、動産はロシアに所有権がある)、ロシアが運営し、両国の利益になるものに限定して情報を収集分析すると規定された。本稿では割愛するが、様々な細かい規定がある。


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