2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2018年10月8日

社風は異なるがビジョンは共有

 「車には愛が求められるので『愛車』と呼ばれる。私はこの愛を大事にしている」と大企業のトップらしからぬ情緒的な発言をする豊田社長。

 一方のソフトバンクは特別の傑出した技術を持っているわけでもない。孫社長は兆円単位のファンドを世界各地の将来的に芽が出そうなビジネスに種まきをして、収益を計算する。『孫正義300年王国への野望』(杉本貴司著、日本経済新聞社)によると、「部下に対して『2000年から2300年までの300年間の売り上げ計画を作れ』と命じた」そうで、未来志向の稀代の経営者なのかもしれない。このやり方だけを見ても、トヨタとソフトバンクは社風が相当異なる感じがする。

 しかし、豊田社長は「両社のビジョンは同じで両社首脳4人の意見はかみ合った」と指摘した。つまり、次世代の移動サービス事業であるモビリティについての考え方では一致したということだ。しかも、トヨタは世界中で大量の自動車を提供できる。

 一方のソフトバンクは出資したライドシェア企業を足し合わせると世界のライドシェアの90%のシエアを持つことになり、膨大なデータが自動的に集まってくる。中でも中国のライドシェア市場トップの滴滴出行を傘下に入れているだけに膨大なデータを集積できる。世界中でモビリティのデータをこれだけの量を蓄積できる企業は欧米にもないと見られており、多種多様なデータが得られるソフトバンクはAIを進化させる上で大きな強みになる。トヨタもこの点に関しては、ソフトバンクには到底勝てないと見たに違いない。

 AIの性能の優劣は、消化したデータの量によって決まると言われている。大量のデータで訓練されたAIは、あらゆる事態に遭遇してきているため事故や故障が少なくなる。ほかのAIと違って洗練されており、こうしたAIを自動運転車などモビリティに組み込めば、世界的にも負けない競争力を発揮することができる。となると、トヨタとソフトバンク連合は進化することはあっても離れられないパートナーとなっていくかもしれない。


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