使われる食材は、基本的に会社が負担している。「今日は特にこれが食べたい」という場合は、近所に買いに行くこともあるが、その場合も上限500円程度の補助が出るという至れり尽くせりの制度。社員が顧客に最高のサービスを提供するために、会社として何にお金をかけるべきか。クックパッドなら当然「キッチン」であり「料理」であり、「まかない制度」は社員の仕事の質を高めるために必要不可欠なものと考えられている。
料理ができない会社なんて
なぜ、まかない制度は始まったのだろうか。
「キッチン付きのオフィスを設計したのは今のオフィスで2件目です。前回の外苑前にあったオフィスに移転する際に社員へ要望を聞いたところ、『毎日仕事に追われてなかなか料理ができないので、社内に調理スペースがほしい。定期的に料理を作る機会がほしい』という声が多くあがったことがきっかけでした。」(櫻井さん)。
1998年の起業以来、順調にレシピ数・ユーザーを増やし、2009年7月には東証マザーズ上場。成長を続けるベンチャー企業であるが故に、社員は少ない人数で多くの仕事をこなさなければならない。「(お客様が)毎日の料理を楽しみにすることで、心からの笑顔を増やす」という企業理念を掲げているにもかかわらず、自分たちがそれを実現できていないという矛盾が生じていた。多くの社員が抱いた疑問から、「まかない制度」が生まれた。
業務にも役立つ
クックパッドに掲載されているレシピは、ユーザーから投稿されたものであり、社員が手を加えることはない。しかし、実際にレシピを見ながら料理をすることで、顧客の立場として自社のサービスについて気づけることがあるという。
「(システムについて)パソコンの前であれこれ仮説を立てたことも、実際にレシピを見ながら料理をすることで、新たな発見があります。例えば、『材料の記載はもっと右寄りの方が見やすいな』など、クックパッドが一つの『キッチンツール』として成り立っているかを検証できる良い機会にもなっています」(櫻井さん)。
まかない制度は、社員が自社のサービスを本気で使ってみる良い機会にもなっている。
食材は無料。気分転換やストレス解消になり、普段の業務にも活かせる「まかない制度」。クックパッド社の社食は、社員も会社も得をするwin-winの関係を生み出している。
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