2022年7月1日(金)

公立中学が挑む教育改革

2018年10月31日

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多田慎介 (ただ・しんすけ)

ライター

1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイト入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職を経験。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。著書に『「目的思考」で学びが変わる 千代田区立麹町中学校長・工藤勇一の挑戦』(ウェッジ)。

保護者からのクレームが減った理由

 現在の麹町中学校では、第一学年の例を挙げれば、すべてのクラスの担任が毎週変わる。担当する教員によっては、クラスの雰囲気も変わる。

 週ごとの担任は、単純にローテーションで回しているわけではない。クラスにもいろいろな生徒がいる。特に支援しなければいけない生徒がいれば、「今週は女性の教員が担当しよう」「今週も引き続き○○先生が関わって」といった形で、学年主任を中心に協議しながら決めている。ここで割り当てるのは「主担任」「副担任」の役割分担だ。

「まだ学校生活に慣れない1年生の場合は、主担任・副担任のいずれかが次の週も同じクラスに残るようにしています。1週間ごとに適切な引き継ぎができないと、生徒が頑張っていることをちゃんと誉めてあげられなくなる可能性があるからです。『先週はできなかったけど、今週はできるようになったね』と声をかけてあげるためには、情報の引き継ぎが欠かせません」

(撮影:編集部)

 必然的に、職員室での教員同士の会話も増えた。来週は自分がそのクラスに関わるかもしれない。そう思えば関心の対象はどんどん広がっていく。

 副担任となる機会には、教室の後ろで様子を見て主担任の補助をする。前年度までは、副担任といえば主担任が出張で不在のときなどにフォローするような立場でしかなかった。自分の教科以外で、他の教員の学活や道徳の授業の様子を見る機会もほとんどなかった。それが今では同じ教室にいることができ、教員同士で学び合う機会にもなっているという。

 子どもたちに伝わりやすい話し方は? どのように生き方について語りかける? そんなことを教員同士で学び合う。かつては同じ教員の立場で「ダメ出し」をするのが憚られる雰囲気もあったが、今では互いに指摘し合えるようになったそうだ。

 この体制は、さっそく一つの成果につながった。保護者からのクレームが減少したのだ。前年度までは「担任の対応」に関するクレームが学校に入っていた。それがほとんどなくなった。

「保護者へは『何かあったら、誰でもいいので、話しやすい教員に連絡してくださいね』と声をかけています。学年の教員全員が分かるようにしていますから、と。校長は『私に連絡してもいいですよ』としょっちゅう呼びかけていますね(笑)」

 2018年度の夏休み前には、この体制になってから初めての保護者面談が行われた。保護者には事前に、面談する教員を第一希望から第三希望まで指名してもらった。

「学年主任に希望が集中するのかな? とも思いましたが、実際にはかなりばらつきがありました。教員の年齢や経験に関わらず、保護者と子どもの希望は多様でした。『子どもと年代が近い、若い先生の意見を聞きたい』という人も多かったですね」

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