なでしこ女子の夢は“英語で案内できるバスガイド”
12月14日。メルボルンのゲストハウスで出会ったアンリは21歳。高校卒業後にバスガイドとして2年勤務。
アンリは初めての海外体験で、当日午後日本から到着したばかり。先輩バスガイドが英語で外人観光客にガイドしているのを見て“かっこいい”と憧れて英語習得を決意。貯金と親の援助で150万円を確保してワーホリ・ビザを申請。
翌日銀行口座を開設して、語学学校に短期コースを申し込みに行くとのこと。それから日本人向けのミニコミ誌で仕事を探すという計画であった。
オーストラリアでも違法労働者にはブラック職場しかない
12月20日。タスマニア島中央の小都市ランセストンのスーパーで日本人青年二人組に遭遇。彼らによるとタスマニアは気候が穏やかでブルーベリー、いちご、チェリーなどの収穫(picking)の賃金が高いのでワーホリ志願者に人気らしい。
他方で違法滞在しているマレーシア人やインドネシア人などは就労ビザがない。雇用者側は最低賃金保証義務がなく、税金、社会保険、健康保険を納付する義務もないので“安く使える労働力”(cheap labor)として低賃金で酷使しているという。
賃金未払いのケースもあるが、こうした違法滞在者は当局に訴えることもできず泣き寝入りという。
ニューサウスウェールズのマクレーン近郊の牧場主によると悪質な牧場主は違法労働者を意図的に雇用して労務コストを抑制しているとのこと。
途上国出身者は容易に取得できる学生ビザで入国して違法就労しているケースが多いようだ。“就労目的留学生”の行き着く先は日本と同様にブラック職場しかないのだろう。
フランス男子は農園仕事(farm job)で荒稼ぎ
12月20日。ストラスブルグ出身のフランス男子とロンセストンのゲストハウスで遭遇。ワイン畑(vineyard)で植樹(planting)に従事して3カ月。
2週間後にはタスマニア南部のホバートに移動してサクランボの収穫(cherry picking)で稼ぐ計画。重労働だが収穫量に応じた出来高払いなので一日で350豪ドル(≒3万円弱)は稼げると鼻息が荒い。
一般にフルーツの収穫時期は短期間なので効率的に農園から農園に移動する必要があり、移動手段(transportation)を確保するために最近中古車を買ったという。
将来の不安を抱える邦人カップル
12月21日。ゲストハウスのキッチンで夕食を準備して邦人カップルと夕食。彼らも近隣のワイナリーの葡萄畑で働いている。
葡萄の木の手入れは専門知識が必要だ。引退したワイナリーの職人が指導員としてワーホリの若者たちに技術指導している。老人達は作業シーズンの半年は指導員として働き、残りの半年はゴルフや釣り三昧の暮らし。セミリタイヤで豊かな老後を送れるオーストラリア社会が羨ましいとカップルは慨嘆。
仕事場までの往復のため彼らは中古乗用車を購入。日本語ミニコミ誌やウェブサイトには中古車の売買広告が多数あるので日本人どうしで簡単に売買可能らしい。
男性はイタリア語を学ぶためにイタリアの地方都市に三年留学。女性は貿易会社勤務を辞めてフランス語習得のためカナダ東部(フランス語圏)で2年ワーホリ経験。オーストラリアのワーホリは金銭面では魅力的だが、自分たちのキャリア形成には何の役にも立たないと将来への不安をのぞかせた。
ニュージーランドのカメラマン志望
12月21日。ルームメイトの髭面青年はニュージーランド出身でカメラマン志望。政治家を被写体とするニュース写真、雑誌に載せる人物写真、個人の肖像写真などで小銭を稼いでいる。
旅行資金と生活費を稼ぐためにオーストラリアで農場仕事をしている。農場仕事は休日労働や早出・残業が不可避で体力的に厳しい。「その分稼ぎも良いけど、一生続けるのは御免だぜ」と苦笑いした。
農場の監督の指示で夜明け前に車を運転して現場に到着。午前の仕事が一段落したら持参したサンドイッチをかじって昼食。そして日没後の午後8時過ぎまで休みなしの作業。ゲストハウスに戻ってキッチンで自炊して夕食。洗濯してシャワーを浴びて10時には就寝。繁忙期にはこうした生活が続くという。
リンゴ園の日本人グループ
12月22日。ロンセストンからジョージタウンを目指して北上。途中、道路沿いの果樹園で作業中の男子4人、女子5人の邦人グループを発見。
リンゴの木の枝の剪定作業をグループで請け負ったとのこと。真夏の紫外線対策として、帽子を被りタオルやマスクで顔を隠し手袋をして長袖・長ズボンという重装備。
脚立に登って剪定、降りて脚立の位置を動かす。また脚立に登って剪定。これを独楽鼠のように敏捷に繰り返す。私が声を掛けた女子以外は私を無視して一心不乱に作業に没頭していた。