2024年11月22日(金)

立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2018年12月20日

第3のシナリオ、米国への引渡しを拒否した場合

 中国側が米国への身柄の引渡しを拒否した場合、カナダの裁判所は引渡しの当否を判断する手続に入る。引渡し手続をめぐる審理日程を決めるため、孟氏は来年2019年2月6日に裁判所に出廷する予定になっているのだが、そこにたどり着くまではすでに2か月以上もかかっているのだ。

 全体的な手続の流れは以下の通りだ。

 2019年2月6日の法廷までに、米国司法当局はカナダに孟氏の引渡しに関する書類一式を提出しなければならない。そこで審理が始まるわけだが、これは裁判ではない。法廷は孟氏が求める証人喚問や証拠提示には応じないだろう。そもそもカナダの裁判所は容疑者の有罪か無罪かを裁定するわけではなく、外国(米国)政府が提出した証拠や書類等が、裁判を行う理由、ひいては米国への引渡しを実行する理由の立証に足るものであるかどうかを審査するのみである。

 審査の結果、引渡し承認となった場合は、州政府や孟氏の代理弁護士の意見を聞いた後に、最終的な引渡し可否の決定が行われる。カナダの裁判官が米国の引渡し請求を不当とした場合、孟氏はカナダで釈放される。ただし、引渡し決定に対して孟氏は上告し、司法審査を請求することもできる。上告は最終的にカナダ最高裁判所に持ち込まれることになる。

 このように引渡しをめぐる駆け引きは長引けば、数カ月ないし数年に及ぶことも想定される。米国陣営によるファーウェイの排除活動はすでに早いペースで展開されている。さらに米中貿易戦争のいわゆる「休戦期限」である2019年3月までそれほど時間が残されていない。孟氏の引渡しや裁判が数カ月や数年かかった場合、たとえ最終的に米国の裁判所で孟氏が逆転勝訴になったとしても、ファーウェイは経営上致命的な打撃を被ることになる。

 中国にとって不運なことに、選択肢はまったく用意されていないのである。

連載:立花聡の「世界ビジネス見聞録」

  
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