2024年12月4日(水)

WEDGE REPORT

2019年2月26日

 1年9カ月に及ぶモラー特別検察官によるロシア関連疑惑(ロシアゲート)の捜査が終了し、近く報告書が司法長官に提出される見通しだ。焦点はトランプ氏が大統領選挙の際、ロシアとの共謀したのか、一連の捜査を妨害したのかなど「大統領の犯罪」を指弾しているのかどうかだ。次期大統領選が事実上スタートする中、米政界は固唾をのんで報告書の公表を待っている。

(bluebeat76/Gettyimages)

5つの捜査

 モラー特別検察官の捜査は当初、2016年の大統領選挙の際、ロシアと共謀して対立候補である民主党のヒラリー・クリントン氏に不利な情報を流し、トランプ氏を勝利させたのか、というロシアゲートに照準が合わされていた。

 しかし、その後、

  1. コミー連邦捜査局(FBI)長官に捜査の手心を加えるよう大統領が求めた司法妨害疑惑
  2. トランプ氏の不倫相手2人に選挙直前、口止め料を支払った選挙法違反容疑
  3. 新大統領就任式実行委員会の海外資金流入問題
  4. 事業不正行為や脱税などトランプ一族の犯罪

 この4つの分野にも捜査対象が広がった。

 ロシアゲートについては、トランプ大統領が「でっち上げ。政治的魔女狩りだ」という非難に終始、事実を暴き立てるメディアを「国民の敵」として罵った。ニューヨーク・タイムズ紙のまとめによると、大統領は就任以来これまでに1100回以上ロシアゲート捜査を非難。一度以上非難した日数は、在任期間で330日にも達している。

 この関連で起訴されたのは40人。米国人が11人で、残りはロシア人だ。米国人にはポール・マナフォート元トランプ陣営選対本部長、マイケル・コーエン元大統領個人弁護士、マイケル・フリン元大統領補佐官(国家安全保障担当)、大統領の友人で元選対幹部ロジャー・ストーン氏らが含まれている。

 トランプ氏自身も含め、面談やメールなどでロシア側と何らかの形で接触した陣営当局者は18人。その回数は計100回以上に及んでおり、トランプ陣営がクリントン氏追い落としのため、ロシア側との接触を必死に求めていたことを浮き彫りにしている。

 そうした実例の1つが2016年8月に行われたニューヨークのトランプタワーでのトランプ氏の長男ジュニア氏とロシア人女弁護士との会談だ。クリントン氏に不利な情報を持っているという弁護士の触れ込みだったが、そうした情報はなかったとされる。会談にはジャレッド・クシュナー上級顧問、マナフォート氏らも同席した。トランプ氏はこの会談が暴露された時、ジュニア氏に虚偽の発表を行わせ、隠蔽しようとした。

 また、トランプ氏の長年の友人ストーン氏はロシア側がクリントン陣営をハッキングしてメールを暴露した事件で、事前にこの計画を知っていた疑いがあるが、大統領に不利な証言はしないと語っている。報告書はこうしたロシアゲートをめぐる数々の疑惑についてトランプ氏がどう関与し、場合によっては命令を出していたのかに踏み込んでいるのかどうかがポイントだ。


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